2018 Fiscal Year Research-status Report
タデウシュ・カントルにおける身体と記憶-美術と演劇の相関関係
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15K02116
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
加須屋 明子 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 教授 (10231721)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポーランド / 現代美術 / 演劇 / 前衛 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度に引き続き、ポーランドにおける実験的演劇表現のルーツとその発展についての研究を進めた。その際、カントルおよび同時代の芸術家たちが社会におい て果たした役割や政治との関わりについて注目した。冷戦期から雪どけを経て、体制転換後に大きく変化したポーランド社会と、それにつれて変化しながら現代 に至る芸術、特に身体表現のあり方に関しても研究を進めた。2018年はポーランド独立100周年、2019年は日本ポーランド国交樹立100周年と記念の年が続くが、 カントルの美術と演劇にまたがる芸術活動の在り方は極めてポーランド的ともいえることから、こうした記念年が続くことは研究の進展にとって非常に有意義である。更に申請者が芸術監督として兵庫県たつの市にて継続中の「龍野アートプロジェクト」では、「混成軌道」というテーマにて、ヨアンナ・マリノフスカとJ.T.やスパーを招聘し、ポーランドの国民的オペラ「ハルカ」(モニューシュコ作、1847-48頃)をハイチで演じた記録の映像作品を上映し、トークを実施したほか、アグニェシュカ・ポルスカの批評的・象徴的な短編映像作品やカロリナ・ブレグワの寓意に満ちた物語の展開する長編映像作品を上映し、またクラクフの日本美術技術博物館マンガ会場でも「龍野アートプロジェクトinクラクフ」を実施し、作曲家薮田翔一と映像作家アレクサンデル・ヤニツキとのコラボレーションをするなど、今日的な表現や上演芸術の実施を通じて演劇と美術の関係を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通りに進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のまとめ。「タデウシュ・カントルにおける身体と記憶-美術と演劇の相関関係」について包括的研究を実施し、美術と演劇とがどのように関わっているのかといった点にも注目しつつ、美術とパフォーマンスとの関係についても考察を行う。20 世紀広範の社会主義諸国において、パフォーマンスによる直接的身体表現は極めて重要な意味を持つものであった。冷戦の終結と、新たなテロとの戦いが現れた今世紀において、かつて直接的表現の持ち得た力がどのように変容しているのかを示すと共に、今後の芸術の可能性について論じる。本研究の成果に基づき、申請者の所属する国際美学会やポーランドで開催されるシンポジウム、研究会にて発表し、国内外の美学研究者や美術史研究者、ポーランドの研究者との意見交換を進める。また日本ポーランド国交樹立100周年記念「セレブレーション 日本ポーランド現代美術展」を日本とポーランドにて開催し、パフォーマンスや演劇といった上演芸術に焦点を当てた企画を実現し、美術と演劇との今日的関係について考察し、報告書を発行して研究成果の公開につとめる。
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Research Products
(2 results)