2016 Fiscal Year Research-status Report
プロティノス美学におけるアイステーシスの位置づけ―受容と把握の機能をめぐって―
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15K02118
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
関村 誠 広島市立大学, 国際学部, 教授 (20269583)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プロティノス / 感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究に引き続いて、プロティノスにおける感覚の理論が、彼自身の形而上学的な哲学思考の中に必然性をもって組み込まれていることを確認して、その思索の内実を捉えて美学的な意義についての考察を深めることを課題とした。今年度は、とりわけ「把握」(アンティレープシス)の概念がいかにプロティノス美学の中で、感覚(アイステーシス)の機能との関連で働いているかの考察に取りかかった。現代にも通じる美学的な意義については、フランスの哲学者のミシェル・アンリのカンディンスキー論との比較を学会において発表し、学会誌に掲載されることとなった。そこでは、プロティノスのエイドスの概念とそれに関係する感覚機能とをアンリの理論におけるフォルムの位置づけと対比しつつ考察し、プロティノスにおいても、アンリにおいても、見えないレヴェルと見えないレヴェルのエイドスとフォルムとの関連づけが感覚との関わりで議論されており、見えないエイドスやフォルムが見えるエイドスやフォルムに先行する点も強調した。その結果、プロティノス美学の創造性に関わる一側面を考察することができた。また、形の内在性の観点から日本の思想との比較も行なった。さらに、プロティノスが依拠しているプラトンの哲学思想との関係性について、フランスのトゥールーズの大学で発表の機会を得て、プラトンの思想に対応する思索展開がプロティノスの美の理論にあることを指摘して、プロティノスにおいて美を捉える働きとしての感覚(アイステーシス)が、肉体的・物体的な美を感覚するだけではなく、それとは区別されて、イデアのレヴェルの存在をその痕跡とともに把握する知性的働きに通じる側面ももつことを主張した。以上により、プロティノスにおける感覚機能の特質を知性的な働きとの関連で捉える考察を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内学会で1回、国際学会で2回の研究発表を行ない、またフランスの大学で発表の機会を得て、研究内容について多くの研究者と話し合うことができた。その結果、研究の意義と課題がより明確となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究をさらに考察を深めて精度を上げた分析を行ない、成果をまとめるとともに、感覚と把握の機能を想像力の問題と結びつけてさらに考察を進める。
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