2016 Fiscal Year Research-status Report
ニコラウス・ペヴスナー、その知られざる実像―精神の深みからの社会改良
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15K02123
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
近藤 存志 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (00323288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ニコラウス・ペヴスナー / イギリス芸術文化史 / デザイン史 / モダン・デザイン / 社会改良 / 日用の美 / イギリス美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、多彩を極めたニコラウス・ペヴスナーの芸術文化史研究の中でも特に、①第2次世界大戦目前にペヴスナーの中に生まれた社会改良的視点に基づくモダン・デザインへの美術史的関心の源流が、彼のドイツ表現主義芸術に対する関心にあった可能性について、②ぺヴスナーが「中世的精神の近・現代的意義」を強調しながら、一般大衆の生活空間を形成している〈日用の美〉の諸事例について美術史的考察を加えた事実について注目した。 資料収集活動は、前年度に引き続き、1)ペヴスナーの芸術文化史学の研究手法に向けられた批判の系譜、2)ペヴスナーによる中世的精神の近・現代的意義に関する主張、3)ペヴスナーが第2次世界大戦後の英国デザイン産業に向けて発信した社会改良的提言、4)ペヴスナーのプロテスタント・キリスト教観と芸術文化的関心の関連性の計4点に注目しながら行い、あわせて研究成果の発表・公表(海外学会・国際会議発表3件、国内学会発表1件、英文論文3編、邦文論文1編)に努めた。 具体的な研究成果の発表は、第11回International Conference on the Arts in Society (平成28年8月)、The International Conference on Design History and Design Studies(平成28年11月)、DAKAM: Eastern Mediterranean Academic Research Center主催の国際会議HOUSE & HOME '17 / International Interdisciplinary Architecture and Urban Studies Conference(平成29年3月)、意匠学会第58回大会(平成28年7月)において行った。また、これらの発表内容は学術論文としても発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題との取り組みは、おおむね順調に進んでいると考えている。本研究課題にかかわる追加資料の収集は、順調に進んでいる。また、本研究課題を遂行するにあたって注目している4つのテーマ―1)ペヴスナーの芸術文化史学の手法に向けられた批判の系譜とその反証の試み、2)ペヴスナーによる中世的精神の近・現代的意義の強調と〈日用の美〉をめぐる芸術文化史的考察、3)第2次世界大戦後の英国デザイン産業への提言とペヴスナーの社会改良的精神、4)ペヴスナーのプロテスタント・キリスト教観と社会改良家としてのモダン・デザインの提唱―に関する考察と、研究成果の発表(海外学会・国際会議での発表、論文の執筆等)も順調に進んでいる。 具体的な研究成果の発表としては、平成28年度は海外学会・国際会議での研究発表を3件、国内学会での研究発表を1件行った。平成29年度は、さらに海外学会・国際会議での発表を2件(いずれも発表採択済み)予定しており、本研究課題に関する研究成果の発表の準備は、資料の収集およびその検討と並行して、おおむね順調に進んでいる。今後も引き続きそうした発表内容を学術論文としてまとめることに力を注ぐつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究課題を遂行するにあたって注目している上述の4つのテーマの中で、特に「ペヴスナーの芸術文化史学の手法に向けられた批判の系譜とその反証の試み」および「ペヴスナーのプロテスタント・キリスト教観と社会改良家としてのモダン・デザインの提唱」について追加的な資料収集を継続するとともに、個々のテーマに焦点を絞って考察を継続する。それと同時に、研究成果を海外学会・国際会議において発表していく予定である。具体的には、平成29年度は、計2件の海外学会・国際会議の発表を予定している(2件とも既に発表採択済み)。まず、6月中旬にパリで開催されるThe Arts in Society Research Network主催の年次研究大会12th International Conference on the Arts in Societyにおいて‘Nikolaus Pevsner’s “Neo-Victorianism”: What a Modernist-Functionalist saw in Victorian architecture’と題した研究発表を行うことになっている。続いて9月には、イギリス学士院後援の研究事業の一環としてイギリス・ロンドンの大英図書館を会場に開催される国際会議‘Editing the Twentieth Century’において‘Nikolaus Pevsner’s Vision as an Editor: The Architectural Journal and twentieth-century democratisation of architecture’と題した研究発表を行う予定である。 また平成29年度は、本研究課題にかかわる研究成果の口頭発表原稿に加筆、編集のうえ、順次学術論文として発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度に発表を行う海外学会・国際会議(計2件)への参加費、旅費を捻出し、海外での追加的な資料収集も行えるようにするために、本年度の科研費を一部繰り越せるように努めた。今後も、本研究課題の成果を海外学会・国際会議等において発表することを優先し、必要に応じて使用額・使用計画の見直しを行う可能性がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
6月中旬にパリで開催されるThe Arts in Society Research Network主催の年次研究大会(12th International Conference on the Arts in Society)および9月にイギリス学士院が後援する研究事業の一環として大英図書館を会場に開催される国際会議‘Editing the Twentieth Century’において、本研究課題に関する研究発表を行うことになっているため、こうした海外での研究発表にかかわる旅費・諸経費として使用する計画である。また、9月の研究発表にあわせて英国で行う資料収集活動にも一部使用する予定である。
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