2016 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における「群舞」の研究-楳茂都陸平を中心に-
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15K02128
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
桑原 和美 就実大学, 教育学部, 教授 (60341137)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近代舞踊 / 舞踊譜 / 群舞 / 大正文化 / 文化外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の計画は、1)文献資料に基づき、大正期から昭和戦前期の「群舞」に視点を当て、当時の舞踊界の状況を検討する、2)楳茂都陸平の舞踊作品『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパショナータ)』の舞踊譜解読と舞踊の再現を進め、さらに振り起こしした動作を舞踊手に振り移しする、3)『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパショナータ)』以外の3つの作品の舞踊譜解読に着手する、であった。 これらに関する平成28年度の実績は、まず1931年の舞踊作品『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパショナータ)』の舞踊譜について、上方舞師範2名の協力を得て、楳茂都流および楳茂都陸平に特徴的な記譜法と用語を理解した上で舞踊譜の解読を終了した。この作業は平成27年度末に計画をやや前倒しして開始しており、今年度は5月から2017年2月まで毎月1回各5~6時間のペースで進めた。さらにこの解読した舞踊を3月に2日間かけて、8名の舞踊手に振り写しし、音楽に合せて演舞を行った。その演舞は映像に記録した。ただし、約17分間の複雑な群舞を2日間で完全に覚えて演舞することは困難だった為、練習を行った上で平成29年度に改めて演舞し、記録映像を撮ることにした。 また上記の作業を進める中で、すでに記譜を解読し、2012年に再現演舞を行った楳茂都による『春から秋へ』との間に舞踊動作、群舞構成について大きな違いがあることが明らかになったことから、本研究の当初の計画を修正して、『春から秋へ』の作品分析を改めて行い、まず1921年と1931年の2つ舞踊作品を比較することにした。 それ以外の舞踊譜については、『裸山の一夜』(1931)について舞踊譜の解読を行ったことにより、先の2作品に比べて舞踊手の数、群舞構成において大きな相違があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパショナータ)』の舞踊譜解読、踊り手への振り写しについては、予定通りに進行した。また平成29年度に予定していた、舞踊と音楽との調整や演舞の洗練化についても行い、この点については計画以上の進展があった。ただし今回、2日間での舞踊手への振り写しを完了し、洗練された演舞を行うというスケジュールにはやや無理があったこと、また練習・撮影場所とした会場が演舞空間としては充分な広さだったが、1箇所に固定したカメラで全体を撮影するには奥行きが不十分で、舞踊手が部分的にカメラの範囲から出てしまったことから、改めて奥行きのある会場での撮影を行う必要が生じた。 また『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパショナータ)』の舞踊譜解読と再現を進める中で,すでに記譜を解読し舞踊の再現を行った『春から秋へ』についても、以前の研究では十分ではなかった舞踊動作と群舞構成についての分析を行い、2つの作品の違いを明らかにすることが重要であることがわかったため、計画を修正し、『春から秋へ』の検討を行った。 上記を行ったことにより、予定していた『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパショナータ)』以外の舞踊譜『蚊』『総力』については解読の着手に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、すでに振り写しと演舞練習を行った『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパショナータ)』の再現演舞の記録撮影を行う。さらに,その映像と舞踊譜に基づき、舞踊動作と群舞構成を中心に作品分析を行い、まず『春から秋へ』と比較することにより、1921年と1931年の2つの作品の異同を明らかにする。 上記について、国内の学会で研究発表を行う。 また、『裸山の一夜』『蚊』『総力』の解読を行い、これらの振付け、特に舞踊動作と群舞構成について『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパショナータ)』と比較し、それらの特色と時代(時期)による相違・変化を考察する。 さらに 海外の舞踊研究機関において、1920年代から1930年代の欧米における群舞作品を視聴し、本研究において再現した2つの舞踊、およびそれ以外の舞踊譜を解読した作品と比較考察することにより、この時代の日本と西欧の群舞の特色と相違について考察する。
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