2017 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における「群舞」の研究-楳茂都陸平を中心に-
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15K02128
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
桑原 和美 就実大学, 教育学部, 教授 (60341137)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 新舞踊 / ドイツ・ノイエタンツ / 舞踊譜 / 群舞 / 西洋舞踊受容 / 集団 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の実績は以下の3点に集約される。 1)前年度に終了した楳茂都陸平の『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパッショナータ)』の舞踊譜解読に基づき,8名の舞踊手に動きを振付けし、舞踊譜との丁寧な照合を行ないながら、音楽を伴った形での再現演舞を実施した。演舞の会場として千葉市美浜文化ホールの舞台を使用し、その映像を記録した。 2)舞踊譜及び再現演舞の記録映像に基づき、『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパッショナータ)』における舞踊動作、群舞構成、音楽と動きの関連を分析し、その特徴を考察した。その結果は、第69回舞踊学会大会(12月3日、日本女子大学)において発表した(タイトル「楳茂都陸平振付《熱情奏鳴曲(ソナタ・アパッショナタ)第1楽章について》。なお今回は発表時間の関係で解読・再現した2つの楽章のうち、第1楽章に絞っての発表となった。 3)『熱情奏鳴曲(ソナタ・アパッショナータ)』、また日本の近代舞踊と西洋舞踊との関連性を検討するため、ブレーメン・タンツフィルム研究所とケルンの国立タンツ・アーカイヴにおいて、1920-30年代のドイツ・ノイエタンツを中心に、群舞作品あるいは群舞場面の映像調査を行なった。ブレーメン・タンツフィルム研究所では、同研究所ディレクターのHeide-Marie Hartel氏、戦前期ドイツのダンスの再現に取り組んでいるDr. Nele Lipp氏と、German Modern DanceとJapanese Modern Danceの関係性について、再現された舞踊作品のMovementから検証する共同研究の進め方について話し合いを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・全体としては当初の研究計画に沿って順調に進んでいる。特に《熱情奏鳴曲(ソナタ・アパッショナータ)》の再現演舞を無事に完了できたことは大きな成果であり、またその成果の一部を第69回舞踊学会大会で発表した点についても評価できると考える。 ・ドイツの2つの舞踊研究施設での映像調査が、充実した内容で実施できた点は評価できると考える。ただし、ある程度予想はしていたものの、1920-30年代の多くの貴重な舞踊映像が存在する一方、群舞に関しては極めて限られ、楳茂都の群舞との比較ができるほどの十分な資料は得られなかったことから、考察の観点については今後見直す必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は成果発表と次の研究段階へ進むための準備を行う。 ・国内においては、平成29年に引き続いて舞踊学会での口頭発表を予定しているが、学会の発表は時間が限られており、どうしても成果を十分に伝えるためには複数回にわたる発表が必要になる。従って本研究の成果は口頭発表だけでなく、学会誌への投稿も合せて行なう予定である。 ・海外での成果発表の場としては、本研究課題が1920年代以降のドイツを中心としたノイエタンツ(モダンダンス)との関連が深いことから、ドイツにおける舞踊の研究集会が望ましいと考える。現時点では、2019年6月にドレスデンで開催される第5回ダンスコングレスでの発表を予定している。
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