2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02132
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
元木 幸一 山形大学, 人文学部, 名誉教授 (10125669)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ユーモア表現 / ミゼリコルディア / 笑い / 大衆版画 / ウルム大聖堂 |
Outline of Annual Research Achievements |
・北方ヨーロッパ美術におけるユーモア表現に関する基本文献を、特にミゼリコルディアに関連してミュンヘン、ニュルンベルクなどで調査、収集した。 ・平成27年9月に、ウルム大聖堂、フライブルク大聖堂、マウルブロン修道院聖堂、コンスタンツ大聖堂など、ミゼリコルディアを中心とする教会内部のユーモアモティーフを中心に調査旅行を実施した。それらはデジタル画像による資料として保存した。また、ミゼリコルディアの表現を、大口を開けた怪物の顔、糞尿的モティーフ、ハイブリットな怪物表現、動物、鳥、逆さまの世界などモティーフ別に分類することを開始した。これらにより、多くの市民的教会はもちろんのこと、修道院聖堂にも滑稽なミゼリコルディア表現が存在することが判明した。これは中世世界がユーモアに満ちていたことを示している。 ・美術館における作品調査としては、ニュルンベルク市ゲルマン民族博物館、ミュンヘン市アルテ・ピナコテークおよびバイエルン州立博物館、カールスルーエ市バーデン・ヴュルテンベルク州立博物館などにおいて、ヨーロッパ北方の中世からルネサンスにかけての絵画、版画、彫刻などを調査し、ユーモア表現を詳細に分類した。 ・版画の広汎な調査・分類を実施し、ユーモア表現の手法を(a)駄洒落、(b)糞尿譚的イメージ、(c)艶笑譚的イメージ、(d)擬獣化イメージ、(e)男女逆転イメージ、(f)動物と人間の逆転イメージ、(g)その他に分ける。 ・15世紀フランドルの巨匠ファン・エイク兄弟作《ヘント祭壇画》におけるユーモア表現を分析し、大教会の大祭壇画における笑いの要素を発見し、そのことを論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・教会堂におけるユーモア表現、特に内陣内のミゼリコルディアに関する調査を実施するため、南ドイツに2週間程調査旅行を実施した。これによってウルム、ニュルンベルク、ミュンヘン、コンスタンツ、フライブルク、バーデン-バーデン、マウルブロンなどに所在する多くの教会内部を調査することができた。ただし、ベルリンを含む北ドイツの調査は平成28年度以降となる。また、治安上の理由でベルギーなどへの調査は断念した。テロなどの状況ゆえやむをえなかった。 ・ルネサンス絵画や版画を調査するため、ニュルンベルク、ミュンヘン、カールスルーエなどの美術館調査を実施し、それらの収蔵作品に多くのユーモア表現を発見し、その手法を分類することができた。 ・版画、絵画のユーモア表現の具体的研究に関しては、《ヘント祭壇画》という本格的な大祭壇画におけるユーモア性を発見したので、この見解を論文にした。意外な発見だったので、それに時間を割かれたが、研究全体を見渡した時、かえって有益な発見だったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
・平成27年度に南ドイツの主要教会、主要美術館の調査を実施したので、平成28年度には、北ドイツの教会、美術館の調査を行いたい。特に、トリーアー、マールブルク、マグデブルクの諸教会、ベルリンの諸美術館などを調査する。当初予定していたベルギーなどの調査は治安上危険があることを考慮し、中止する。 ・実地調査を行った諸教会のミゼリコルディアなどのモティーフ分類を実施する。また、ミゼリコルディア以外の教会内のユーモア表現の性格を分析する。 ・美術館調査で発見した版画におけるユーモアモティーフの分類を実施する。また写本彩飾におけるモティーフも分類する。 ・それらミゼリコルディア、版画、写本画における図像的意味、社会的機能、受容のあり方などを対象を絞ることで具体的考察を進めたい。その一部を論文化する。 ・さらにそれらユーモア表現と教会の儀式、私的祈念との関係にも考察を進める。
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Causes of Carryover |
年度末の段階で注文した洋書の値段が予想と異なったためわずかな残金を生じたので、次年度使用額としたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
図書を中心とする物品費に使用する。
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