2016 Fiscal Year Research-status Report
仏教絵画における水墨技法の受容に関する比較美術史的研究
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15K02139
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
増記 隆介 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (10723380)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 北宋 / 早春図 / 奝然 / 呉越国 / 和様化 / 画師 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は二回の海外調査、研究課題に関する三回の研究発表、また二篇の論文執筆を行った。海外調査については、北宋時代における水墨山水画、及び南宋仏画における水墨表現の調査として、11月13日から18日までの期間、台湾・国立故宮博物院における「公主的雅集 蒙元皇室与書画鑑蔵文化」特展において、荊浩「匡廬図」、郭煕「早春図」、伝劉松年「羅漢図」等の調査を大学院生三名とともに実施した。ついで、米国において、第11回日本美術に関する国際大学院生会議の引率時(3月9日から17日)に、唐及び奈良時代における水墨技法の仏画への応用状況の調査として、ボストン美術館「法華堂根本曼荼羅」の調査、写真撮影を実施した。 研究発表としては、五代呉越国の絵画の日本への流入状況に関する研究を10月30日「呉越国の絵画と日本」と題し、大和文華館で行った。また、10世紀後半の渡宋僧による中国絵画の認識という課題について、11月27日「奝然が見た唐宋絵画」と題し、東大寺グレートブッダシンポジウム「日宋交流期の東大寺」において発表した。さらに平安時代における仏画制作の作画技法や修理による古典学習の状況について、2月11日「平安時代の仏画制作とその修理」と題し、京都大学総合博物館において発表した。 論文としては、10世紀の日本絵画における「和様化」の問題をこれに前後する中国の唐宋絵画の様式変化と連動するものと捉え、その内容を主に当該期の画師に関する資料を用いることで復元的に考察した「十世紀の画師たち 東アジア絵画史から見た和様化の諸相」を『美術研究』420号に発表した。また、後白河院政期における五代絵画の受容の様相について智積院「童子経曼荼羅」を中心に『国華』1445号において論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は研究期間が短く、調査や研究発表等にあまり進捗が認められなかったが、今年度は、研究全体としてはおおむね順調に進行している。特に研究者及び一般向けの研究発表及び論文等を通じて、その成果の一端を複数回にわたり公にしていることが特筆される。ただし、今後シンポジウム等による国際的な議論の場が必要と感じており、これについては次年度に国際シンポジウムを開催する予定である。また、国内の国宝を主とする大型の仏画に関する調査が所有者等の意向もあり、当初予定より少し遅れている。これについては次年度夏の奈良国立博物館における特別展に際して、所有者及び奈良国立博物館の協力を得て実施する予定である。海外調査についてはおおむね予定通り進捗しており、次年度も中国、台湾を中心に海外調査を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今時の研究を通じて、台湾・国立故宮博物院の陳韻如女史、アメリカ・ハーバード大学のユキオ・リピット教授、同ボストン美術館のアン・モース女史等との研究上の交流が従来以上に広範なものとなっている。これらを生かし、次年度は神戸大学における国際シンポジウムを企画している。日本側3名、国外の研究者3名程度の規模となる予定である。 また、研究成果については、このシンポジウムでの発表内容も加味しつつ、報告書として、調査に同行した大学院生による論文等も掲載してとりまとめる予定である。 調査については、国内調査を中心に当初予定している「応徳涅槃図」(高野山金剛峯寺)、「釈迦金棺出現図」(京都国立博物館)、「阿弥陀聖衆来迎図」(有志八幡講十八箇院)等の大型作品の調査を実施するとともに、2018年秋に国立故宮博物院において開催される仏教絵画名品展における調査を計画し、五代から南宋に至る仏教絵画における水墨技法の受容の様相について研究を深める。またこれとは別に故宮博物院における作品熟覧の申請も進めており、仏教絵画以外の作品についても10点ほどの調査を行う予定である。あわせて、北宋の都であった開封、南宋の都であった杭州における現地調査を実施する予定である。これらを通じて、わが国における仏教絵画史研究をより開かれた研究分野として対外的にもより深い認識が得られるように努力したい。
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Causes of Carryover |
当該助成金は、初年度の交付時期が通常より大幅に遅れた秋であったため、初年度の助成金を全額2年度目に繰り越した。そのため残が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額については、海外調査及び国際シンポジウムの規模を大きくすることで次年度に使用する計画である。
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Research Products
(6 results)