2015 Fiscal Year Research-status Report
エル・グレコによるヴァザーリ『列伝』評釈の総合的研究
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15K02144
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
松井 美智子 (森美智子) 東北学院大学, 教養学部, 教授 (40142898)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エル・グレコ / ヴァザーリ / 『列伝』評釈 / ビザンティン美術 / 古代美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、エル・グレコによる『列伝』評釈の精査:『列伝』における、とくに古代美術とビザンティン美術に関わるグレコの欄外註と下線部分について精査を進め、そこに含まれる問題点を整理した。加えて、北方美術家を中心とするイタリアにおける異邦人美術家に関する評釈の精査を進行中である。 2、1の問題点を究明するために、『列伝』におけるヴァザーリの芸術史観に関する文献の収集を国の内外で行ない、並行して収集した文献を手掛かりに研究の進展に努めた。 3、イタリアにおける実地調査は、フィレンツェ・ローマを中心に北イタリアの一部を含めて行ない、グレコの欄外註で確認しうる、彼がイタリアで実見した可能性の高い具体的な作品群の調査を行った。トレヴィーソにおける「イタリアのエル・グレコ」展においては、新出のグレコ帰属作品の調査も行った。 4、上記1~3に立脚して、その一部の成果を論文「エル・グレコと彼の父祖たちの芸術――古代美術とビザンティン美術をめぐる画家のヴァザーリ『列伝』評釈」にまとめ公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1、 当初の実施計画に従って、グレコの『列伝』註釈について、傍線のみの部分を含めて着々と精査を進行させている。グレコの出自ギリシアに関連する古代美術とビザンティン美術に関連する『列伝』註釈については、精査を終えて雑誌論文に研究成果を発表した。また北方美術家を焦点としたイタリアにおける異邦人美術家に関する註釈の検討・精査も目下、進行中である。 2、文献資料の調査と収集に関しても、ボーズやバロルスキー、ルービン、さらにバリオルトほか監修の基本文献を入手した。これら収集した文献の精査も順調に進行している。 3、イタリアにおける現地調査については、ローマに加えて、フィレンツェそして部分的ながら北イタリアにおいても一部実施することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
1、文献資料の調査収集と精査については、既に入手を終えて精査を進行中の課題を完了に向けて順次進展を図る。またグレコによる『列伝』註釈の執筆時期を明らかにするための重要な研究資料である、グレコの自筆資料の写真資料の収集に着手する。 2、イタリアにおける実地調査は、フィレンツェを中心に中部イタリアの諸都市を含めて行う。とくにウンブリアとエミリア・ロマーニャの中小都市にグレコの足跡が多数存在する可能性が高いことから、『列伝』註釈の具体的な記述と符合させながら入念・慎重に調査を行う。 3、1、2を踏まえて可能な限り早期に研究成果を論文にまとめる考えである。
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Causes of Carryover |
当初計画していた文献資料の収集案件が、発注したものの時間的に当該年度内に入手と会計処理が出来なかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1、文献資料の調査収集と精査;27年度に実現できなかった文献資料の収集作業の継続に加えて、(1)アンチ・ヴァザリアンの美術家たちによる『列伝』註釈に関してH.ボドマー、Ch.デンプシー、P.バロッキ、M.オックマン、D.ベナーティー等の文献資料の調査と収集、その精査を行う。 2、とくにグレコによる『列伝』註釈の執筆時期を明らかにするため、グレコの自筆の写真資料のの収集に努め、精査を行う。 3、イタリアにおける現地調査を、フィレンツェを中心としつつ中部イタリアの中小都市を含めて行う。
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