2016 Fiscal Year Research-status Report
エル・グレコによるヴァザーリ『列伝』評釈の総合的研究
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15K02144
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
松井 美智子 (森美智子) 東北学院大学, 教養学部, 教授 (40142898)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エル・グレコ / ヴァザーリ / 『列伝』評釈 / アンチ・ヴァザリアン |
Outline of Annual Research Achievements |
1、エル・グレコによる『列伝』評釈の精査:前年に引き続き、北方美術家を中心とするイタリアにおける異邦人美術家に関するグレコの欄外註と下線部についての精査を進め、問題点を整理した。その結果、デューラーに代表される北方美術家による版画やグレコと同様にヴェネツィアで活躍した異邦人美術家スキアヴォーネ等の版画を、初期より晩年に至るまで重要な着想源とし続けたグレコの制作態度との関連、また彼自身を含むマイノリティとしてのイタリアにおける異邦人美術家への共感が浮き彫りとなった。 2、文献資料の調査・収集とその精査については、アンチ・ヴァザリアンの美術家たちによる『列伝』註釈に関する、ボドマー、Ch.デンプシー、オックマン、ベナーティなどの研究資料を収集し、文献の精査を目下進めている。 3、イタリアにおける現地調査については、フィレンツェを中心に中部イタリアの諸都市、特にウンブリアとエミリア・ロマーニャ、マルケ地方の中小都市であるパルマ、モデナ、ボローニャ、ペルージア、アッシジ、アンコーナ等にグレコの足跡が多数存在する可能性が高いため、『列伝』註釈の具体的な記述と符合させながら、入念・慎重に調査を行ったほか、一部ローマについても同様の調査を行った。 4、特定主題のヴァリアントを大量に制作したグレコ工房の問題を考察する重要な視点となる、オットー・クルツの古典的学術文献『贋作』の翻訳作業(共同)をほぼ完了することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エル・グレコによる『列伝』評釈の精査に関しては、前年に引き続き、北方美術家を中心とするイタリアにおける異邦人美術家に関するグレコの欄外註と下線部についての精査を進め、問題点を整理することが出来た。北方美術家による版画を重要な着想源としたグレコの制作態度は、彼自身を含むマイノリティとしてのイタリアにおける異邦人美術家への共感と無縁でないことが推察される。 また文献資料の調査・収集とその精査については、アンチ・ヴァザリアンの美術家たちによる『列伝』註釈に関する研究資料を調査収集し、文献の精査を着実に進めている。 イタリアにおける現地調査については、フィレンツェを中心に中部イタリアの諸都市、特にウンブリアとエミリア・ロマーニャの中小都市を実施した。 さらにO.クルツの古典的学術文献『贋作』の翻訳作業(共同)をほぼ完了することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
1、既に文献資料の調査収集を終え資料の分析と精査に着手している具体的な課題を完了に向けて順次進展を図る。 2、イタリアにおける現地調査は、グレコによる『列伝』註釈にもっとも大きなウェイトを占める同時代美術をめぐって、現在まで調査を完了していない対象を中心に、グレコによる具体的な記述と符合させながら入念に行う。 3、研究課題を遂行するためのこれまでの活動の諸成果を、可能な限り早期に研究論文にまとめる考えである。
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Causes of Carryover |
当初計画していた文献資料の収集案件が、発注を行ったものの時間的に当該年度内に入手と会計処理が出来なかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記発注を行った文献資料の入手等を行う。
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