2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K02145
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
小林 頼子 目白大学, 社会学部, 教授 (10337636)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 洋風画 / 中国 / インド / ビオンボ / 西洋銅版画 / 東西融合形 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、中国洋風画を主たるテーマとしている。そのため、以下の著書を入手し、さらには公開データベースを参照し、その特性の把握に務めた。 1.『天学初函』理編及び器編(上・中・下);2.『誦念珠規程』;3.『進呈画像』; 4.『程子墨苑』;5.Pessca. Project on the Engraved Sources of Spanish Colinial Art (Web site) 中国においては、イエズス会が皇帝周辺に提供したキリスト教銅版画を木版画化した作品のなかに興味深い洋風画が見られる。ほとんどが西洋様式をそのまま移しているが、なかに物語の場を中国の建築内部に移すなど、西洋・中国の融合形が認められることが判明した。 前年度までの研究の積み残しとして、インドの洋風画の調査も実施した。9月にはアメリカ合衆国のクリーヴランド美術館で、The illustrations from Mirror of Holiness(CMA, 2005.145.1-24)連作のうち24点ほかの多くのミニアチュールを閲覧し、西洋宗教銅版画の理解と聖書の理解がジェローム・ザビエルとインドの宮廷画家たちのもとで、いかにインド化され、独特の東西融合形の洋風画を生み出したかを確認した。また3月には、パリのルーブル美術館、ギメ美術館、ルフト・コレクションにて、同様のインド洋風画を閲覧した。 予定にはなかったが、調査の過程でクローズアップされてきた洋風画の一形態・ビオンボ(メキシコ・スペイン・ポルトガルで日本の屏風の影響下で制作されたスクリーン)についても、数点をマドリードのアメリカ美術館で閲覧し、同館の学芸員と制作方法やイコノグラフィーについて意見交換をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、アジア各地で制作された洋風画がテーマとなっている。この研究には調査の対象となるべき作品(特にミニアチュール、木版画)のオリジナルでの閲覧が必須の前提となる。しかし、それら作品のほとんどは、現在、アメリカ・ヨーロッパの美術館に所蔵されている。このため、アメリカ・ヨーロッパを中心とした海外調査に出ることになるが、所蔵館が各地に散らばっていて、一回の調査でカヴァーできる範囲が限定されざるを得ない。また、出張も、大学の夏・春の休暇中の実施となるため、年2回に限られ、目的の遂行が必ずしもスムーズに行かないことが多い。 残り1年では集約性と能率を高め、進捗状況を正常化すべく努力したい。 また、調査途上では、同じ東西文化の融合形式だが、西洋からアジアへの流れを示す洋風画ではなく、日本から南アメリカ・ヨーロッパへの文化移動から生まれた「和風画」とも称すべき作品の存在にも関心が向いてきている。この面での調査は、本来調査の内容をより学問的に充実させる可能性があり、そちらにも重点を置いているため、全体の進行がやや遅れ気味になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、予定では、これまで3年度間にわたり続いた本科研費研究のまとめの段階に入るが、上記の研究進行状況に鑑みて、さらなる関連作品の閲覧を続けたいと考えている。 また、マドリードのアメリカ美術館で閲覧させていただいた日本の痕跡のある西洋画(日本の屏風に誘発されて制作されたビオンボ、螺鈿を用いたキリスト教絵画など)についても、当初の研究計画にはなかったテーマだが、本研究に幅と深みをもたらすと確信しているため、同館の学芸員と連携して、調査を進める心積もりである。 しかし、2018年度は本研究の最終年度であるため、そうした試みと平行して、これまでの成果を踏まえて、論文等のとりまとめとその刊行も視野に入れている。すでに拙稿を刊行する著作物も、その刊行時期も定めており、本研究の完成年度末(来年3月)までには確実に成果を示す予定である。
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Causes of Carryover |
支出の端数のため出た次年度使用額です。
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Research Products
(2 results)