2017 Fiscal Year Research-status Report
ジェームズ・ティソと同時代のイメージ文化:≪パリの女≫シリーズに見る類型的表現
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15K02147
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
吉田 紀子 中央大学, 総合政策学部, 教授 (20433873)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジェームズ・ティソ / フランス近代美術史 / ポピュラー・イメージ / 複製芸術 / 視覚文化 / 女性像 |
Outline of Annual Research Achievements |
19世紀後半のフランスとイギリスにおいて、アカデミックな技法で現代的主題を扱う折衷画家として活躍したジェームズ・ティソ(1836~1902年)は、1883年から1885年にかけて、15点の油彩画から成る≪パリの女≫シリーズを制作した。瀟洒な室内調度や女性ファッションを描いて成功したティソにとって、同時代のポピュラー・イメージ(広告、雑誌挿絵などの大衆向け複製イメージ類)は作品生成の上で重要な参照先であった。本研究ではティソの油彩画および関連するイメージ資料を検証材料として、画家がポピュラー・イメージから油彩画へ何をどのように転置して、類型的な女性表象を構成していったのか考察していく。これにより「ハイ・アート」である油彩画とその外部という、異なる視覚文化領域間でのイメージ交流の実態を明らかにすることが、最終的な研究目的である。 研究3年目の平成29年度は、上半期の4月に当該年度の研究実施細目を決定し、これに沿って下半期の11月に海外研究協力者1名の来日中に小規模な研究会を開き、ティソ研究の現況について有益な意見交換を行った。次いで2月にはロンドン(イギリス)とパリ(フランス)で第3回海外調査を実施した。とりわけロンドンでは「ロンドンの印象派たち:1870~1904年に国外生活者となったフランス人芸術家」展(テイト・ブリテン美術館)を見学した。本展はティソの絵画がまとまった形で出品される貴重な企画であり、1870年代の彼の作画が「外国人(フランス人)の眼差し」でイギリス風俗を捉えたものと当時認識されていたことが指摘されていた。これは研究代表者のこれまでの分析と一致する見解であり、本研究の方向性に対して一定の意義を保証するものである。 本年度までの調査結果および考察に基づいて、平成30年度7月7日開催予定の学習院大学哲学会講演会において研究発表を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年3月31日をもって中央大学より学習院大学へ転出見込みとなったため、平成29年度は中央大学の学内研究費による研究計画を完了させることに傾注した。そのため本研究課題における海外調査実施に遅れが生じる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降、当初の研究実施計画を順次取り戻し、海外調査と国内における論文作成を並行して進めていく。また平成29年度までの調査結果と考察を整理して、平成30年7月7日開催予定の学習院大学哲学会講演会において研究発表する計画である。ここでの意見交換を今後の研究の進展へと反映させていきたい。 なお所属機関の変更により研究にやや遅れが生じている現状を鑑みて、研究期間の1年延長を視野に入れ、研究課題の十分な目標達成を果たしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成27年11月に発生したパリ同時多発テロ事件、および平成29年度の研究機関変更見込みによって当該年度の海外調査回数を計画変更したため、それぞれ次年度使用額が生じて繰り越されている。 (使用計画) 海外調査の延期により生じた次年度使用額は主として旅費として使用する計画である。なお所属機関の変更により研究にやや遅れが生じている現状を鑑みて、今後、研究期間の1年延長も視野に入れ、研究課題の十分な目標達成を果たしたいと考えている。
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