2018 Fiscal Year Research-status Report
ジェームズ・ティソと同時代のイメージ文化:≪パリの女≫シリーズに見る類型的表現
Project/Area Number |
15K02147
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
吉田 紀子 学習院大学, 文学部, 教授 (20433873)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ジェームズ・ティソ / フランス近代美術史 / 版画 / 風俗画 / ポピュラー・イメージ / 複製芸術 / 視覚文化 / 女性表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
パリ・コミューン崩壊後、1871年にロンドンへ移住したジェームズ・ティソ(1836~1902年)は当地において現代的主題を扱う風俗画家として成功を収めるが、1882年には帰国し、翌1883年から1885年にかけて15点の大型油彩画から成る≪パリの女≫シリーズを完成させた。何気ないエピソードを主題にアカデミックな手法で女性ファッションや室内調度品を丹念に描き出す画風は、パリ画壇への復帰をかけたと言われる本シリーズにも引き継がれ、同時代の文化や流行に対する画家の強い関心と観察力が反映されている。このようなティソにとって、当時、流布していたポピュラー・イメージ(広告、雑誌挿絵などの大衆向け複製イメージ類)は作品生成の上で重要な参照先であった。本研究ではティソの油彩画、版画および関連するイメージ資料を検証材料として、画家がポピュラー・イメージから油彩画へ何をどのように転置し、さらに油彩画を自ら版画化して、どのように類型的な女性表象を構成していったのかを考察する。これにより「ハイ・アート」である油彩画とその外部という、異なる視覚文化領域間でのイメージ交流の実態を明らかにすることが最終的な研究目的である。 研究4年目の平成30年度は、これまでの調査結果に基づく考察を整理すると共に、8月21日から9月2日まで第4回海外調査(フランス)、次いで3月7日から3月17日まで第5回海外調査(フランス)を実施した。1885年の≪パリの女≫シリーズ初公開時の展覧会目録、その前後にティソがパリの有力画商と交わした自筆書簡等、重要な一次資料を実見し、調査することができた。 研究成果公開の一環として、平成30年7月7日に学習院大学哲学会講演会において研究発表を行った。さらに令和元年7月27日には美術史学会東支部例会において研究発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年4月1日に中央大学より学習院大学へ所属研究機関を変更したため、平成29年度は中央大学の学内研究費による研究計画を完了することに傾注した。そのため本研究課題の海外調査実施に遅れが生じることとなり、今日に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降、当初の研究計画を順次取り戻し、海外調査と国内における口頭発表および論文作成を並行して進めている。研究期間の1年間延長が承認されたことを受けて、今後、研究課題の十分な目標達成を果たし得るものと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成27年11月に発生したパリ同時多発テロ事件、また平成29年度末での所属研究機関変更見込みによって、それぞれ当該年度の海外調査回数を計画変更したため次年度使用額が生じ、繰り越されている。 (使用計画) 研究期間の1年間延長が承認されたことを受けて、海外調査の延期によって生じた次年度使用額は主に旅費、物品費(パソコン関連機器)として使用する計画である。
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