2017 Fiscal Year Research-status Report
ラグーザの未公刊史料を通してみる近代イタリアにおける美術・工芸を巡る状況の研究
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15K02152
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
河上 眞理 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (20411316)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヴィンチェンツォ・ラグーザ / パレルモ / 日本美術 / 工芸 / ジャポニスム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究3年目の今年度は、昨年度に引き続き、パレルモ市立図書館からデータで持ち帰ったラグーザの未公刊史料をリスト化し、翻刻、プリントアウト、紙ベースでのファイリング作業を進め、本研究に関係する史料の内容を概ね理解することができた。 作業を進める中で、特にラグーザの日本美術・工芸観、故郷パエルモに創設した工芸学校の着想源を見出すことができた。これについては次年度中に論文としてまとめたい。 今年度も引き続き在外調査・研究をおこなうとともに、過去2年間の研究成果を公開する機会を得ることができた。平成29年6月7日から7月末まで、ラグーザの故郷であるイタリア、シチリア州都パレルモのサン・テリーア館での「清原玉とヴィンチェンツォ・ラグーザ 東京パレルモ間の橋 (O'Tama e Vincenzo Ragusa. Un ponte tra Tokyo e Palermo)」展にあわせて開催されたシンポジウム「ヨーロッパにおけるユートピアとしての日本(L'utopia del Giappone in Europa)」において、イタリア語で「教師として、彫刻家として、蒐集家としてのヴィンチェンツォ・ラグーザの日本での経験(L'esperineza giapponese di Vincenzo Ragusa come insegnante, scultore e collezionista)」を口頭発表した。その内容は来年度中に報告書としてイタリアで出版される予定となっている。 また国内において開催された展覧会において本研究に関係する新知見を得ることができた。 昨年度、東京のイタリア文化会館における「イタリア研究者の日」において口頭発表した"Vincenzo Ragusa e l'Arte Giapponese, su fonti inedite"が、その報告書 "Atti della Settimana della lingua italiana nel mondo 2016", Istituto Italiano di Cultura, Tokyo, pp. 15-19に掲載され、2017年10月25日からWeb上で公開されている (http://www.iictokyo.com/ryugaku/settimana/2016_ebook/index.html)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中核を成すのは、パレルモ市立図書館に所蔵されているラグーザの未公刊史料の解読だが、そのリスト作成、本研究に直接関係する史料の翻刻、翻訳を進めた。紙の劣化や悪字により読解不可能な部分もあるが、本研究の核心に関わる部分については翻刻するとともに、必要な部分の翻訳も進めることができたので、研究の進捗状況は概ね順調であると言えるだろう。 また上述したように、パレルモにおける「清原玉とヴィンチェンツォ・ラグーザ 東京パレルモ間の橋」展にあわせて開催されたシンポジウムにおいて、これまでの研究成果を踏まえた「教師として、彫刻家として、蒐集家としてのヴィンチェンツォ・ラグーザの日本での経験」を口頭発表し、成果の一部を公開することもできた。この発表内容は同シンポジウム報告書に掲載されることになっており、今年度中の刊行が予定されている。 さらに同シンポジウムにおいて、イタリア人研究者と意見交換によって得た新知見本研究を大いに進めることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成30年度も引き続き、ラグーザが日本に滞在していた時代の日本の美術・工芸に関する作品を国内の美術館・博物館で閲覧し知見を得るとともに、19世紀末までに行われた美術・工芸の展覧会に関する資料収集をおこなう。ラグーザの日本滞在は、彼の美術・工芸観の形成に影響を与えていると考えられるからである。 他方、彼の美術・工芸観の形成は故郷イタリアを含むヨーロッパにおける動向と不可分であるため、これについても研究を深めていく。 また、これまでの研究成果を纏め、社会化すべく、日本の学会での口頭発表及び、論文投稿をおこないたい。2018年夏には明治美術学会において研究成果を口頭発表することがおおよそ決定している。同時に同学会誌への論文投稿を準備したい。 また、これまでの研究を補強すべく、在外調査・研究もおこない、研究全体を纏めるべく努めたい。
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Causes of Carryover |
物品費が予算で計上していたよりも安価に済んだため。
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Research Products
(3 results)