2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02155
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
松原 知生 西南学院大学, 国際文化学部, 教授 (20412546)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | モース / 陶芸 / 骨董 / ジャポニスム / 博覧会 / やきもの / 陶磁 / 工芸 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績の内容は、以下の3つの論点に大別できる。 (1)1877年の日本到着直後、モースがどのような経緯で日本の造形文化に関心を抱いていったのかを考察した。具体的には、『日本その日その日』や『日本人の住まい』などの著作の読解を通じて、彼が当初、都会の上流階級のための美術品ではなく、田舎に住む庶民の日常生活のための空間や道具に「よき趣味」を見出していたこと、一般の人々の「趣味」を重視するこのような見方には、当時英米両国で広く読まれたチャールズ・イーストレイクの『家庭内趣味のヒント』の影響が色濃いことを明らかにした。 (2)1877年に開催された第一回内国勧業博覧会において、モースがどのような展示品に興味をもち、日本の工芸文化のいかなる点に注目していたのかを考察した。具体的には、國雄行氏による一連の先行研究や一次資料の読解、浮世絵や写真などの視覚資料の分析を通じて、内国博の概要と歴史的意義を把握した上で、モースが日本の工芸品を観察する中で、人工と自然、必然と偶然、現実性の重視とその侵犯など、一連の相反する要素の共存をそこに見出し、それがのちの日本陶器への開眼につながっていったことを明らかにした。 (3)第2回日本滞在において、モースが特に九州と関西に旅する中で、各地の陶芸についてどのように調査し、個々のやきものを入手したのかを考察した。1879年の九州滞在では、鹿児島と熊本(八代)において彼が地元の県令や郡長にどのように歓迎され、友好の証として薩摩焼や高田焼を贈られ、それらがコレクションの形成においてどのような意味をもったのかを明らかにした。同年の京都滞在では、3代清水六兵衛や幹山伝七らの窯元を訪問したモースが、作品だけでなく彼らの住まい、作業場、技法や道具、生活様式など、制作と販売を取り巻くより幅広いコンテクストに着目し、その「生態」を観察・記述していることを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、モースの第1回・第2回日本滞在についての考察に主眼を置いたため、研究実施計画で予定していた第3回滞在における日本の好古家や陶芸家たちの交流については、結果的にやや調査が手薄となった。これらの問題については、すでに図書や論文の入手や予備的考察はほぼ完了しているため、平成29年度に研究を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は前項で述べた日本でのモースの調査・蒐集活動に加え、アメリカやヨーロッパにおけるモースの足取りにも目を向けたい。具体的には、来日以前の若きモースがどの程度まで芸術一般に親しんでいたのか、その素養が日本での骨董開眼にどのように関わっていたのかを明らかにする必要がある。また、アメリカ帰国後のモースが欧米諸国でどのように蒐集活動を継続し、ボストンに一大コレクションを築くに至ったのか、その意義が奈辺にあるのかを考察し、本研究の結論としたい。
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Research Products
(2 results)