2015 Fiscal Year Research-status Report
実作例に基づく日本の宮廷装束および調度の基礎的研究
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15K02159
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
山川 曉 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, その他部局等, その他 (70250016)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 美術史 / 工芸史 / 服飾史 / 日本史 / 宮廷装束 / 宮廷調度 / 有職 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、当研究の根幹を成す、京都国立博物館をはじめとする国立各館に分蔵されている京都御所伝来とされる装束および調度、加えてほかの博物館や大学に所蔵されている装束および調度の実作例について、展覧会図録や所蔵品目録を集積しつつ、テキストおよび画像のデジタルデータ化をおこなった。データを蓄積していく過程で、装束および調度それぞれの共通調書形式を検討し、本年度は、現時点での調書案に基づき調書の作成を行っている。またあわせて、明治から大正時代にかけての作品目録など、脆弱化しつつある紙資料について、デジタルデータ化を行った。 文献からデータを作成する中で、実際に作品調査を行ったのは、以下の三件である。①京都御所由来品とされる装束および調度の調査53件を実施し、調書作成と簡易画像撮影を実施。②有栖川宮家伝来装束98件について、装束を包む畳紙の簡易画像作成およびテキスト化。③有栖川宮家伝来装束のうち7件について、詳細な調書の作成および保存用画像の作成。 また、今年度の調査品の成果を含めながら、京都国立博物館平成知新館名品ギャラリー染織展示室において、宮廷の装束(2月3日~3月13日)を開催し、22件の作品を展示公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関連文献の収集およびデジタルデータ化は、月に二回以上の実施日を確保して取り組むことができたが、実際の作品調査の日数を確保することが難しかった。本年度の秋に開催された特別展覧会「琳派 京を彩る」の主担当者であったため、物理的に調査に割く時間が制限されたことが原因である。また、非破壊分析による染料の科学調査の実施も、協力者との日程が折り合わず、実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き関連文献の収集およびデジタルデータ化を軸に、実際の作品調査の機会を確保することにより、博物館学芸員ならではの作品調書の作成を加速させていきたい。あわせて、実作例が使用された機会や場といった、本来の用途への考察を深めることにより、日本の宮廷文化の目に見える形での復元をめざしていく。これらの成果を、京都国立博物館での展示によって、毎年紹介していくことを目標とする。
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Causes of Carryover |
実際の作品調査の日数を確保することが難しかったことが原因である。研究代表者が物理的に時間を割くことが難しい状況であったことが最大の原因であるが、宮廷装束および調度は脆弱な作品が多く、そのため、この種の作品の取扱に慣れた研究協力者の招聘を予定していたものの、協力者の所属が変更となったため出張が不可能となり、旅費を使用することが叶わなかった。また、非破壊分析による染料の科学調査の実施も、協力者との日程が折り合わず、実施することができなかった。謝金については、脆弱な装束を取り扱うため、美術品取扱に慣れた専門業者の手配を予定していたが、調査日数が確保できなかったため、使用することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は研究代表者に本課題に取り組む時間が確保されるため、前年度の遅れを取り戻すべく、作品調査回数を月一回程度に増やすことによって、研究費の順調な使用が見込まれる。また現在、新たな研究協力者を打診しており、作品の実際の取扱についても障害は解消される見通しである。
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Remarks |
2月3日~3月13日 京都国立博物館平成知新館名品ギャラリー染織展示室 宮廷の装束
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