2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02160
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Research Institution | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術 |
Principal Investigator |
鄭 銀珍 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、, その他部局等, 研究員 (20531263)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 韓国近代陶磁史 / 高麗青磁 / 復元 / 浅川伯教 |
Outline of Annual Research Achievements |
韓国の高麗青磁は、基本的には近代以降に墳墓のなかから再発見され、高く評価され、研究が進んだ特異な陶磁器である。そして早くから再現品も製作されはじめた。ところが、それらが前近代から近代に入れ替わる混乱期に行われたため、詳しい記録が残されず、収集、評価、研究、再現がそれぞれどのように進展したのか不明な部分が多く、定説と呼べるものがない。再現品にいたっては、価値のない単なるレプリカとされることさえある。本研究は、韓国陶磁史上のそのような欠落を埋めようとするものである。 平成27年度に刊行した実績としては、『出光美術館館報』および香港の美術雑誌Orientation(英文)に論文を発表した。いずれも日本の植民地時期にどのように収集、研究、再現が進んだのかを述べたものである。とくにOrientation誌掲載論文では再現史に重点を置いた。これらは、基本的には従来から研究を進めてきた成果をさらに整理し直したものだが、新たな作品資料を追加している。 高麗青磁の優品は、近代初期の段階で欧米人のコレクターも数多く収集しており、そのなかには再現品も含まれていると思われ、そのようにして欧米に運ばれた作品の調査も欠かせない。今回、Orientationの論文を英語で発表したことによって、高麗青磁の再現品というテーマを欧米の研究者に改めて紹介することができた。実際、アメリカのある美術館の学芸員からは、所蔵の高麗青磁をもう一度精査してみたいという感想が届いた。今後、この美術館と共同で調査を行う予定である。 なお『出光美術館館報』所収のものは、出光美術館水曜講演会(5月13日)に招待されて行った講演内容を活字化したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、期間内における目標として、つぎの3点を設定している。1.高麗青磁の初期研究について鍵となる人物であるアレンおよび、そのコレクションに関する調査。2.日韓の美術館、博物館が所蔵する高麗青磁近代作の調査、3.植民地時期の先駆的陶磁研究者である浅川伯教、および当時の新聞、雑誌等の文献についての調査。 1.については、調査予定だったアメリカの美術館が平成28年度まで休館することになったため、アメリカでの調査を本研究最終年度の平成29年度に延期せざるを得なくなった。 2.にかんしては、平成27年度分の予定通り東京国立博物館で調査を行った。担当者とともに3日間かけて80点を実見し、年代鑑定を行ったうえで、記録に残る寄贈年度、購入年度から制作時期をさらに絞り込む作業を行った。これによって、まだ一部ではあるが、近代に製作されたと思われる高麗青磁のデータベース化に取りかかることができた。 3.は、日本の戦前の雑誌『やきもの趣味』を立命館大学図書館で、また領事館報告である『通商彙纂』を京都大学図書館で調査した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記した本研究の目標3点のうち、1.のアレンおよびそのコレクションにかんするアメリカでの調査は、「現在の進捗状況」に記したように最終年度の平成29年度に行う。 平成28年度は、昨年度を継続して、徳島県立博物館、兵庫県の静思館、また韓国の国立中央博物館等で、さらに高麗青磁の調査を進めることに重点を置く。ポイントとなるのは、近代の再現品と思われるものをできるだけ多く集め、それらをさまざまな観点から分類しつつデータベース化を進め、まず再現品の全体像を明らかにすることである。 3.の浅川伯教および当時の新聞、雑誌については、今後も継続する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に予定していたアメリカでの調査を行わず、また国内の調査も一ヵ所しか行わなかったために、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には、日本および韓国での調査を予定しており、繰り越した助成金をおもに旅費として使いたい。 またアメリカでの調査は最終年度の平成29年度に実施する予定である。
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