2016 Fiscal Year Research-status Report
中国金銅仏の鋳造技法及び加工痕の分析による造形表現研究
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15K02171
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
三宮 千佳 富山大学, 芸術文化学部, 講師 (10454125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三船 温尚 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (20181969)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金銅仏 / 加工痕 / 鏨 / 原型施文 / 表面研磨 / 鋳造技法 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国北魏時代金銅仏の制作技法、特に鋳造技法と加工痕の検討のために、中国、韓国の博物館等、また日本の博物館や寺院において合計約100体の金銅仏を調査し、また文献調査を行った。今年度は、作品調査の際に従来の接写撮影による加工痕の詳細調査だけではなく、鋳肌の切削研磨の評価と3D画像による分析を行った(3D画像は、研究分担者として参加している三船温尚の基盤研究(A)(16H01918)「高精細3Dデータ検証による東アジア四千年の青銅工芸・彫刻の造形美と技術の通史研究」にて撮影したものを利用している。) たとえば泉屋博古館所蔵の北魏金銅弥勒仏立像は、衣文線の繰り返される凹凸の造形が非常に美しい作品である。その形状を接写により画像分析をしたところ、両大腿部や台座を除いては、ほとんどの部分で鏨の痕が認められなかった。そこで原型施文による鋳造であるなら、工人はどのような意識で衣文の凹凸を形成したのかを探るために3D画像より衣文の凹凸の断面図を作成し、その深さ、角度、二点間距離を計測した。すると凹凸の深さ、角度、二点間距離はほぼ同じで、工人が衣文を規則正しく刻まれていることが判明した。つまり原型を制作する際、写実的な意識よりも工芸的、装飾的な感覚で仏像を制作していたといえる。これは論文としてアジア鋳造技術史学会『FUSUS』10号に投稿中である。 さらに、中国の金銅仏ではないが、日本の金銅仏の代表的作例である白鳳時代の伝橘夫人念持仏厨子阿弥陀三尊像の詳細調査を行い、加工痕の研究のために、鋳肌表面の研磨評価を行った。この研磨により眼鼻口や衣文の凹凸のうち、特に凸線(稜線)を鎬立たせている部分と丸みを持たせている部分のバランスが、造形表現に大きく関係していることがわかった。この論文についてもアジア鋳造技術史学会『FUSUS』10号に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、加工痕の研究は、接写画像の検討のみであったが、研究を進めていく中で、研究分担者の助言もあり、鋳肌の表面研磨や3D画像による検証など、さらに客観的なデータを集積し検討することができたからである。またこのことは鋳造技法の全体を明らかにし、さらに工人の造形への意識を明らかにすることにつながっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで泉屋博古館所蔵北魏金銅弥勒仏立像や伝橘夫人念持仏厨子阿弥陀三尊像の研究を論文とし、アジア鋳造技術史学会『FUSUS』10号に投稿中である。この2本の論文で、本科研の研究計画を満たす、研究の手法の確立はできたと思われる。 現在、根津美術館所蔵の金銅仏、釈迦多宝二仏並坐像(北魏時代 太和13年(489))の研究を進めている。今年度はそれによる学会発表、また論文執筆を軸に、また新たな作例を調査し、最終年度に向けて研究をまとめていきたいと思っている。
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Causes of Carryover |
2万円ほどの次年度使用額が出たが、3月の中国への調査費用について、研究代表者の見積もりよりも実際の執行額が少なくなったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費および旅費として適切に執行する。
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Research Products
(3 results)