2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the characteristics and historical transition of expression media
Project/Area Number |
15K02186
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
木村 陽子 大東文化大学, 文学部, 准教授 (20736045)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アダプテーション / 三島由紀夫 / 高畑勲 / 平田オリザ / 国語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
アダプテーションの関連文献を渉猟する中で、当手法が、現行(2013-2021)と次期(2022-)の高校国語の学習指導要領において、日本の伝統的言語文化の特徴とみなされ、重要視されていることを知った。そのため、現・学習指導要領が制定されるまでの改訂の議論を調査した。また、高校国語教科書の中で重要視されているアダプテーション作品(「羅生門」「山月記」「高瀬舟等」や作家(森鴎外、芥川龍之介、中島敦、太宰治、三島由紀夫等)を中心とした、アダプテーション視点からの日本文学史編纂に着手し、成果の一部を、「国語教育とアダプテーション―高校『国語総合』教科書の「創作」課題の検証―」として論文発表した。 また、アダプテーションされる頻度の高い8作品(竹取物語、坊っちゃん、銀河鉄道の夜、春琴抄、伊豆の踊子、グッド・バイ、夫婦善哉、鹿鳴館)を調査対象の中心に据え、後世のアダプターの視点からアダプテーションしたくなる作品の特徴を抽出・分析し、成果の一部を、「三島由紀夫『鹿鳴館』のアダプテーション―〈銃声〉の多義性と選択―」として論文発表し、さらに「『かぐや姫』のアダプテーション―高畑アニメによる〈物語の祖〉への応答―」として口頭発表した。 さらに、戦後の表象メディア史の中でも特に異彩を放っている1950‐70年代の三島由紀夫と安部公房の先駆的アダプテーション実践を比較分析した。その結果、三島由紀夫のアダプテーションが、前述した日本の伝統的言語文化の特徴とされる「本歌取り」や「見立て」にも通じるアダプテーションの一つの頂点をなしていると位置づけた。逆に、安部公房が実践したセルフ・アダプテーションは、日本文化の伝統とは根本的に性格を異にする、世界にも類例が乏しい、独自の手法であったと結論し、成果の一部を「日本文学におけるアダプテーション―歴史的背景と三島由紀夫・安部公房の先駆的実践」として口頭発表した。
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