2016 Fiscal Year Research-status Report
舞台芸術の近代化における協働製作を背景とした上演の新奇性とポピュラリティの研究
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15K02189
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大林 のり子 明治大学, 文学部, 専任准教授 (00335324)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | オペレッタ / マックス・ラインハルト / 協働製作 / 客演公演 / ドイツ / 演劇史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は在外研究の期間を活用して、大戦前の1910年代にドイツ語圏を中心に欧州各地へ巡演公演を行った演出家マックス・ラインハルトの足跡をたどることができた。 特に、現在のドイツおよびオーストリアのみならず、東欧の国々(ポーランド、バルト三国、ロシア、チェコ、ハンガリーなど)への客演を行っていた当時の状況を知る上で、各国の博物館や劇場に残された史料の調査は有益であった。 さらに歴史上の地理的な結びつきを改めて認識し、当時の演劇人や芸術家の協働製作の状況がより明確に把握でき、広範な地域において展開されたラインハルトの活動の背景について、これまで見落としがちになっていた新たな視点を得ることもできた。 具体的には、欧州滞在中の各地の図書館および演劇博物館の調査を通して、本研究のテーマである「新奇性とポピュラリティ」という点において、19世紀後半から20世紀前半における音楽劇(特にオペレッタ)の果たした役割の重要性についても再認識することとなり、関連の書籍および資料調査を実施した。 特に、ラインハルトの演出活動の中のオペレッタ演出について再調査を進め、その仕事に取り組んだ時期や内容が、当時の演劇改革との結びつきにおいても興味深い問題を提示していることが明らかになった。 改めて、当時の芸術家の交流の幅の広さや協働製作への意欲的な関わりについても、各地の資料を通してうかがい知ることができ、20世紀初頭から大戦間へといたる時期の芸術家たちの理想と現実が、新たな視点から考察する可能性も見えてきたように思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は10ヶ月ほど欧州に滞在することが叶ったため、現地の図書館や劇場、博物館などの史料に触れる機会が多く得られた。これまでの研究で深めてきた知識や関心について、現地で立体的・具体的に地域的な関連性などを確認するのみならず、協働製作者の地理的あるいは時期的な結びつきについての新たな知見も得ることができ、課題の焦点がより明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、前年度に現地で収集した資料の分析および研究を進めていく必要がある。初年度からの課題としてきた舞台美術家シュテルンや劇作家ツヴァイクと、演出家ラインハルトの関係が、たとえばオペレッタやオペラなど音楽劇を介して、当時の理想とする演劇・祝祭劇の生成に繋がったことも分かってきた。ラインハルトが当時の人気演目であったオペレッタを、新奇性を前面に出した新たな祝祭劇の上演機会に、同時並行的に上演していたことを再考することで、本研究の当初の目的である「協働製作を背景とした上演の新奇性とポピュラリティ」に関する考察をより深めることができると考える。
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