2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02196
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
村井 まや子 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (20347769)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | おとぎ話 / 表象文化論 / 現代美術 / 現代文学 / 民話 / 昔話 / 比較文学 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は以下の3つであ る。 (1)異なる言語・文化・メディアを横断する複合的な視点から、現代文学・美術にみるおとぎ話の表象を比較分析することで、グローバル社会におけるおとぎ話の継承、伝播、変容の様態についての新たな考察を導き出す。 (2)上記の研究から得られる知見を活かして、芸術的な創作活動と連携することで、現代社会におけるおとぎ話の新たな文化的意義を、実践を通して提示する。 (3)上記の研究活動を通して、国際的なおとぎ話研究の理論的枠組みを日本の研究者の立場から問い直し、西洋偏重の傾向から脱して、より多文化的な視点を含む方法論へと発展させる。 2015年度は、現代日本文学・美術におけるおとぎ話の表象を論じた研究書(単著)From Dog Bridegroom to Wolf Girl: Contemporary Japanese Fairy-Tale Adaptations in Conversation with the West をアメリカで出版したほか、ベルギーとアメリカでの2回の口頭発表とパネル・ディスカッション、およびICUでの基調講演(いずれも英語)を行い、国際的に研究成果の公表と意見交換を行なった。芸術創作活動とのコラボレーションの分野では、アーティストの鴻池朋子らと共同で作品を制作して美術展で発表することで、広く一般市民にも研究成果を公表することができた。また、タスマニアで開始したStorytelling Table Runnerプロジェクト専用の英語によるFacebookのページを立ち上げ、おとぎ話とアートのコラボレーションに関する研究成果を国際的に公表した。タスマニアでのプロジェクトは秋田県阿仁地方での同プロジェクトの活動と連携して、Facebookを通じで現在も活発に意見交換を行い、国境を超えたアートプロジェクトとして展開中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は本研究課題に関する次の研究活動を遂行した。(1)現代日本文学・美術におけるおとぎ話の表象を論じた研究書From Dog Bridegroom to Wolf Girl: Contemporary Japanese Fairy-Tale Adaptations in Conversation with the West をアメリカで出版した。(2)アントワープ大学で開催された国際共同研究プロジェクト「子どものメディア文化史研究」のワークショップで、発表(題目: “Happily Ever After for the Old in Japanese Fairy Tales”)と討論を行った。(3)ブリティッシュ・ライブラリーにて本研究に関する資料収集・調査を行った。(4)American Folklore Societyの年次大会で、パネル発表(題目:“The Company of Snakes: Hiromi Kawakami’s Tale of Un-Metamorphosis”)とパネル・ディスカッションを行った。(5)ICUジェンダー研究所主催のシンポジウムに基調講演者として招かれ、現代のおとぎ話の表象について英語による講演とパネル・ディスカッションを行った。(6)鴻池朋子の美術展「根源的暴力」(於神奈川県民ホール)に協力者として参加し、展覧会の理念と構成への助言、美術作品の共同制作、鴻池と山川冬樹との共同パフォーマンスの監修と出演、トークへの出演、および英語による公開ディスカッションを企画し、実施した。(7)平塚市立中央図書館展示ホールにて、図書展示「おとぎ話の森」を企画・監修した。(8)鴻池朋子と共同で、タスマニア大学で現地の住民が参加するアート・プロジェクトStorytelling Table Runnerのワークショップを企画・実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に関する資料の収集と調査、現地調査を行い、国内外の学会と学術誌での研究成果の発表に加えて、芸術創作活動との連携とウェブ上での情報発信を行う。具体的には次の研究活動を予定している。(1)ローザンヌ大学文芸翻訳研究所の招聘により、4月に“The Transformations of Cinderella in Japan”と題する講演を行い、討議する。(2)5月と8月に秋田県阿仁地方で民話の聞き取り調査を行い、鴻池朋子とサウンドデザイナーの森永泰弘と共同で美術作品の制作準備を行う。(3)前年度のアントワープ大学でのワークショップに基づき、英語による論考集を出版する準備を行う。(4)カナダとアメリカの研究者の編集による研究書The Routledge Companion to Fairy-Tale Cultures and Media(2017年刊行予定)のfairy-tale photographyの項の執筆を準備する。(5)9月にブリティッシュ・ライブラリーにて本研究に関する資料収集・調査を行う。(6)International Society for Folk Narrative ResearchとAmerican Folklore Societyの共催による国際学会(10月開催)で、上記(4)の論考に基づくパネル発表を行う。(7)前年度に開始したタスマニアでのStorytelling Table Runnerプロジェクトを進めて、2017年3月にタスマニアで展覧会を開催する。(8)科研費と国際交流基金の助成を受けたRe-Orienting the Fairy Tale: Contemporary Fairy-Tale Adaptations across Culturesと題するおとぎ話の国際学会を、実行責任者として3月に神奈川大学にて開催する。
|
Causes of Carryover |
人件費・謝金として英文校閲費130,000円を予定していたが、アメリカで出版した研究書の英文校閲の費用は、Wayne State University Pressが負担したため、不要となった。また、研究補助の人件費として96,000円を予定していたが、応募条件(本研究課題に関する分野を専攻する博士課程後期課程在籍以上の研究者で、英語と日本語のバイリンガルであること)を満たす人材が年度内に見つからず、使用しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
英文校閲費については、次年度の研究発表の際の英文校閲費として使用する予定である。研究補助の人件費については、次年度にResearch Assistantを採用し、使用する予定である。
|
Research Products
(14 results)