2015 Fiscal Year Research-status Report
クラシック音楽家にとっての即興演奏の学習方法と指導法について実践的研究
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15K02197
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Research Institution | Senzoku Gakuen College of Music |
Principal Investigator |
大類 朋美 洗足学園音楽大学, 音楽学部, 講師 (80587999)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 即興演奏 / クラシック音楽 / 和声 / 作曲 / 編曲 / アウトリーチ / ティーチングアーティスト / 演奏法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、演奏と作曲とが夫々の専門領域として分化し、演奏家は演奏の技術に重き、作曲や即興をしなくなってしまっている現代の日本の音大におけるクラシック音楽家の教育を考え直し、即興演奏を通した総体的な音楽活動を活性化することを目的としている。 20世紀に入るまでの音楽家とは異なり、本研究者を含めて多くのクラシック音楽の演奏家は、即興演奏を音楽活動の一部として、捉えてこなかった。そうした背景の中、今年度は何をどのように学習していくものなのか、ほとんど手探りの状態から始めた。同時に、即興演奏という独立した分野としてではなく、演奏家にとって既存の曲をより上手に演奏するための直接的効果が感じられるものであることが必要であり、それが音楽大学での教育価値を高めると考えた。 そこで今年度は、18,19世紀の和声学習と即興演奏との関係の理解を深めるための研究を主に行なった。国内のピアニストコンポーザーと呼ばれる作曲と演奏の両方を専門としている音楽家や、ハーグ王立音楽院(オランダ)の即興演奏者(カールスト・デ・ヨング先生)より知識提供を頂いた。そして和声や対位法、スコアリーディングの研究を掘り下げることが、総体的な音楽活動において、どのような意義があるのか、その中で即興演奏の技術を身につける手段はどのようなものなのか、和声の学習を通した即興演奏のスキルは、どのように演奏に影響するかを、自身の演奏実践と、大学での授業において、学生の演奏に反映させ、実体験を通した検証を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、国外の音楽大学等の教育機関における、即興演奏の授業内容及び、指導者やプロ即興演奏者の指導法の調査は、行なう機会がなかったが、国内に、オランダのハーグ王立音楽院からプロ即興演奏者をお招きして、ヨーロッパでの動向の紹介や音大の学生対象の即興演奏のワークショップを実施することができた。 また今年度は、日本即興演奏学会において「クラシック音楽家にとっての即興演奏の学習とアウトリーチコンサートへの活用の可能性」というタイトルの研究発表を行なった。 即興演奏のスキルを習得するのは、非常に時間がかかることを実感している。しかし、このプロセスを踏んだ先に、始めて明らかになるのだし、またその指導法や学習法をまとめることは、経験を通して始めて可能となるので、次年度も引き続き、研究に時間を費やしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究を通じて、即興演奏自体に、様々なジャンルや多様なスタイルがあることを実感し、本研究は18-19世紀のクラシック音楽をベースにした即興演奏であることを、より具体的に定義する必要があることを認識した。(それは、フリーインプロヴィゼーションとの、音楽語法の違いを明確にし、ともすると音楽へのアプローチや価値観をも、区別することでもある。) 次年度は、18-19世紀のクラシック音楽スタイルを使った作曲の学習(=即興演奏の学習)を続け、オーケストラ曲を室内楽編成に編曲しアウトリーチ活動に活かしたり、即興演奏を駆使したアンサンブルを導入したり、他分野とのコラボレーションを通したアウトリーチ活動を探求するなどし、即興演奏のスキルを、より多様なコンテクストで活用し、幅広い音楽活動を目指していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、国外の音楽大学や音楽団体/組織などの教育機関における、即興演奏の授業内容及び、指導者やプロ即興演奏者の指導法の調査を、行なうための渡航費や宿泊費、及び渡航先での謝金などを使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降は、前年度計画していた国外の音楽大学や音楽団体/組織などの教育機関の視察をすると共に、国内においても、専門的知識提供者への謝金として使用したい。
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Research Products
(3 results)