2016 Fiscal Year Research-status Report
クラシック音楽家にとっての即興演奏の学習方法と指導法について実践的研究
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15K02197
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Research Institution | Senzoku Gakuen College of Music |
Principal Investigator |
大類 朋美 洗足学園音楽大学, 音楽学部, 講師 (80587999)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ティーチング・アーティスト / アートエデュケーション / アウトリーチ / 即興演奏 / ピアノによる和声学 / ピアノ実技レッスン / 通奏低音 / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、本研究者は、即興演奏の学習法に焦点をあて、そのスキルを身につける方法を探ることによって、音楽を通して社会貢献できる人材育成に役立てたい考えてきた。H.28年度はオランダ王立音楽院やパリ音楽院など先行的カリキュラムを実施している音楽大学を訪問し、即興演奏を取り入れた授業を視察したり、関係者とのインタビューを通して即興演奏の学習法についての見識を高めてきた。 研究者自身が即興演奏の実践研究を進めていく中で、即興演奏はそれ自体が一つの分野として確立しているのではなく、音楽の総合的な力(楽譜を読み解く力/聴き取る力/和声分析力/ソルフェージュ力など)を学習することが即興能力の向上につながり、即興演奏のスキルはそうした総合力の現れの一つだと、理解するようになってきた。併せて、音楽大学の学生は、本研究者の専門分野であるピアノの実技レッスンの中で、即興を単独に学習するより、既存曲の演奏技術向上をさせ、曲の理解を深めることを目的とした上で、即興を取り入れた方が学習意欲が高まることも実証した。 即興学習を取り入れることによって、より多角的な視点から音楽を学び続けることは、学生の総合的な音楽教育を促進することになる。そしてこのような新しい音楽との関係性をつくることによって、新しい聴衆の獲得、新しい演奏会へのアプローチを可能とし、社会とのつながりをつくることは元より、コミュニティ(聴衆)との交流に新しい関係性(学び)を創出することを可能にすると考える。 従って音大生には在学中に、夫々の専門性を重要視しつつも、極度に技術面に専門化することなく、より総合的、より統合的、より創造的に、音楽と関わり、音楽を積極的に学ぶスキルを身につけることが重要であることを提言したい。その延長線上に、地域社会への音楽的貢献があることを、追求し続けることが、我々指導者に求められていると感じている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が予定している3年の内、2年が経過した。本研究者自身が、即興演奏の学習を実践しその学習成果を積み重ねながらの研究であるため、学習内容を消化し、実践に活かすまでのプロセスに時間がかかる。こうした中で、昨年度は、即興的な要素を取り入れたアウトリーチ活動や演奏会を複数の小学校にて開催し、テクニック面だけでなく、音楽学習者や享受者の感性や想像力にはたらきかける音楽活動を実践した。また、即興演奏を活用した大学での授業報告を論文発表したり、即興演奏のプロ奏者を招聘した大学での講座を開催したり、ホームページでティーチングアーティストの事例紹介するなどして、よりクラシック音楽家が即興演奏を学習しやすい環境づくりに寄与してきた。。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年には、昨年度訪問したオランダ王立音楽院の新しい音楽理論のカリキュラム内容の報告、及び大学の授業に即興学習を取り入れた授業報告の論文執筆をする予定である。 また、研究と実践の両軸からアプローチする研究であるので、研究内容を音楽活動にも活かしていく。具体的には、享受者(コミュニティ)が音楽との新しい関係性を構築するための手段として、コラボレーション(文学、絵、振り付け、アンサンブル)を演奏会に取り入れるなどして、聴衆の創造性や感性を高めることに主目的を置いた演奏会を実施する。
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Causes of Carryover |
本研究は研究者自身が即興演奏の学習を実践することが前提にあり、そのプロセスを教育や論文執筆に反映させるため、専門的知識提供者への謝金が必要となる。研究者が得た知見をそのまま我が国に置き換えることは難しいので、いかに我が国の音楽大学の中に取り入れるか、また、いかに地域の中で、夫々の状況に適合した新しいかたちの音楽活動を実現できるかを、追求していく必要がある。このような新しいかたちのアウトリーチ活動を実施するための経費(音楽を絵や文学、振り付け等とコラボレーションする際にかかる経費も含める)も勘案した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下、必要な経費をリストアップする。 ・即興演奏の学習能力を高めるための、専門的知識提供者への謝金。・即興的要素を取り入れた新しいアプローチの演奏会実現のための経費。・新しい演奏会先のアプローチを取り入れた先行的事例を紹介する学会や協議会、大学への視察旅行費。視察旅行はヨーロッパが中心となるが、東南アジアの国々(シンガポールなど)ではリベアルアーツを推進するプログラムの中の音楽の位置づけがユニークであると考え、そちらへの視察旅行も計画中である。
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Research Products
(5 results)