2017 Fiscal Year Research-status Report
両耳聴メディア技術と聴覚性に関する聴覚文化論的研究:1960年代から現代まで
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15K02201
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
福田 貴成 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (60736320)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 聴覚文化論 / 表象文化論 / 両耳聴 / メディア / 聴覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果は、前年度までと同様、「文献資料の収集・分析」と「関係者へのインタヴュー」とに大別できるが、結果として両者のバランスを欠いた進行となった。 前者については、とくに「両耳聴にかんする自然科学論文の調査収集と分析」の進展をみることができた。前年度、本研究課題の全体としての深化の観点から、19世紀の自然科学論文にまで遡行して調査をおこなったが、今年度もその延長において、1880年代における自然科学論文の読解に重点を置いて研究を進めた。その結果として、とりわけ聴覚における近代的「主観性」の認識論的布置について、理解を深めることができた。これは、20世紀に一般化する両耳聴メディア経験における「主観性」のあり方とその変容を理解するための重要な礎になるものと考えている。きたる最終年度においては、両耳聴を舞台とした聴覚的「主観性」認識の今日にいたるまでの系譜を、より詳細にあとづけることを目指したい。 後者の「関係者へのインタヴュー」にかんして、今年度は国内オーディオ・メーカーのスピーカー開発担当者とのセッションを終え、技術開発の側からの「両耳聴メディア」理解のあり方について見識を深めることができた。その一方で、当初予定していた音楽制作者とのインタヴューについては、アポイントメントの不首尾などいくつかの理由により、十分な進展をみることができなかった。冒頭に「バランスを欠いた進行」と書いたのは、この点が理由である。きたる年度においては、とりわけ音楽制作者へのインタヴュー展に重点を置き、本研究課題のバランスのとれた進展を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所記の目標のうち、29年度もっとも進展させることができたのは「自然科学論文の調査収集と分析」である。そのうち、当初想定はしていなかった19世紀にかかわる分析がもっとも進んだ部分になるが、これは本研究課題と密接にかかわるものであり、次年度はそれを1960年代以降の分析と適切にリンクさせてゆきたい。また、「聴覚文化論研究所の読解・分析」についてはこれまでと同様に順調な進展がみられており、次年度もひきつづきこのペースを守ってゆく所存である。 前年度すこし遅れていた「音楽雑誌の調査」については、資料収集を大きく進展させることができた。分析はこれからの部分が残っており、来たる年度に適切にすすめてゆきたい。 一方、当事者へのインタヴューにかんして、オーディオ関連の開発者への取材はほぼ終えることができたものの、当初今年度の進展を見込んでいたミュージシャンやレコーディング・エンジニアなどへのインタヴューについては、予定どおりに進めることができなかった。「やや遅れている」とした最大の理由はこの点にある。アポイントメントがうまくゆかないなど、いくつかの理由によるものであるが、次年度はこれを確実に進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、とりわけインタヴューに重点を置いた進展をこころがける。とりわけ音楽制作者(音楽家やレコーディング・エンジニア)へのインタヴューについては、想定よりも遅れているため、順調な進行に努めたい。そのうえで、インタヴュー内容の分析およびとりまとめも並行して進める。また、すでに完了しているオーディオ・メーカーの方への聞き取りについても、その内容分析を適切にとりまとめる。 文献調査については、前年度までの成果をひきうけて、これを発展させる。「自然科学論文の調査収集と分析」については、ふたたび20世紀後半から現代にかけての時期に焦点をあわせ、資料の読解を進める。「音楽雑誌の調査」にかんしては、前年度に収集した資料の分析をさらに進める。 以上の研究の成果は、所属する学会(表象文化論学会、日本ポピュラー音楽学会など)における口頭発表および論文発表を予定している。加えて、大学紀要などの媒体においても発表をおこないたい。インタビューについても、当事者との合意の範囲において、その発表を目指したい。
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Causes of Carryover |
(理由)当初予定していたインタヴューが十全に進まず、その結果として旅費と謝金の支払額が減少した。そのため、研究期間を一年延長したうえで、残額を次年度使用額として使用することとした。
(使用計画)複数回のインタヴューを実施する予定であり、そのための旅費および謝金としての使用を計画している。
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Research Products
(3 results)