2015 Fiscal Year Research-status Report
モダニズム期のイディッシュ文化圏における表象文化の研究
Project/Area Number |
15K02205
|
Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
樋上 千寿 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (30608740)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | イディッシュ / 東欧ユダヤ / クレズマー音楽 / モダニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
6月と10月にイディッシュ文化圏の表象文化に関する情報交換と共通理解の基盤形成を目的に共同研究会「東欧ユダヤ音楽研究会」を東京にて開催した。7~8月にはドイツ・ワイマールで開催されるイディッシュ文化に関する国際的なワークショップYiddish Summer Weimarに参加し、特にアラン・バーン博士(演奏家、音楽学)が中心となって行われるイディッシュの音楽と舞踏に関するワークショップに参加した(7月25日~8月12日)。このワークショップでは、20世紀初頭のイディッシュ音楽に関する先端的な研究成果に接することができた。近年、ロシアのグラモフォン・レコードによって録音されていた20世紀初頭のイディッシュ音楽(クレズマー音楽)の音源資料の掘り起こしが進められ、ウクライナのヴィルナがクレズマー音楽の一大中心地であったことが判明した。この時期に録音された音源は実に15,000曲に上る。これまでに知られていた主に1920年代以降の北米での録音資料をしのぐ規模のこれらの音源資料の調査と分析は現在も継続されている。ワークショップでは、この録音資料の調査に深く関わったジョエル・ルービン氏によって、レクチャーと実技指導が行われた。この成果の一部を盛り込んだ成果発表の会を10月24日に京都市国際交流会館イベントホールにて、11月23日には東京・両国の「シアターX」にて、「東欧ユダヤ音楽クレズマー演奏会」と題して行った。両日ともシャガール芸術の源泉となったイディッシュ文化と、イディッシュ音楽との関連性についてレクチャーと演奏を行った。また11月22日には、両国の「コミューンX」にてイディッシュ・ダンスのワークショップを主に演奏家を対象として開催した。演奏家が体得するべきイディッシュ音楽とダンスとの深い関わりについて、実践を通して体験する好機となった。当研究テーマに関連の深い書籍を購入した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究会の開催は、当初予定より少なかったが、予定通りレクチャー・コンサートを10月に京都で、11月に東京で開催し、参加者との意見交換、情報の共有も十分に行うことができた。さらに、海外調査では、近年大量に発見された20世紀初頭のヨーロッパ(特にウクライナ)でのイディッシュ音楽の録音資料に関する最新の研究成果に接することができ、この音楽文化の成り立ちについてさらに理解を深めることができた。この成果は10月の京都および11月の東京でのコンサートで発表し、最新情報をいちはやく一般参加者とも共有できたことは大変有意義であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果を踏まえ、さらに発展的な成果共有を目指すため、共同研究会「東欧ユダヤ音楽研究会」を継続開催する(春と秋に各1回程度)。イディッシュ語圏の芸術文化に関する文献の収集と読み込みを進め、随時共同研究会で有益情報の共有を行う。当該年度もテーマを発展させて開催されるYiddish Summer Weimar(ドイツ、ワイマール、7月下旬~約20日間)に参加し、イディッシュ文化に関する最新の研究成果の収集と情報交換を行う。また研究会と海外調査の成果を発表するため、レクチャー・コンサートを10月22日に京都市国際交流会館イベントホールで、11月17日に東京・両国「シアターX」で開催する。国内の演奏家と舞踏家を対象とした東欧ユダヤ音楽のワークショップを11月18~20日の3日間、東京・両国の「ギャラリーX」にて開催する。そのため、イディッシュ音楽の世界的演奏家でありYiddish Summer Weimarのディレクターを務めるアラン・バーン博士ら講師3名をドイツより招聘する。このワークショップは平成29年度にも継続して開催予定である。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた、物品費による欧文文献の購入が少なかったことによる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に購入できなかった欧文文献等の購入に充てる。
|