2015 Fiscal Year Research-status Report
帝国キネマ演芸から見る20世紀初頭の日本映画産業の様相
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15K02207
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
笹川 慶子 関西大学, 文学部, 教授 (30339642)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本映画産業史 / 映画流通 / 天活大阪および帝国キネマ / ユニヴァーサル / トム・D・コクレン / アジア / 大正活映(大活) / 日本映画雑誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
天活および帝国キネマ演芸(帝キネ)の上映記録、大正活映、ユニヴァーサル社について調査研究した。 まず、天活大阪および帝キネの上映記録を『大阪時事新報』を網羅的に調査し、データベース化した。研究成果は、大阪ガスエネルギー・文化研究所などで発表をした。また、2015年8月に『日本映画雑誌所在調査報告書』上下巻を刊行した。これにより、今後の帝キネ関連資料調査が、より網羅的、効率的に行うことが可能になった。 次に、帝キネが設立された時代の日本映画産業の状況を明らかにすべく、帝キネの比較対象として、大正活映にかんする調査を行った。大正活映は、帝キネが大阪に設立されたのと同じ1920年に横浜という東京‐京都以外の地方に設立され、帝キネと同じく松竹との提携によって消滅した会社である。この大正活映との比較により、1920年代前半の日本映画産業における帝キネの立ち位置がより鮮明になった。研究の成果は、関西大学アジア文化研究センターにて「東洋汽船の映画ビジネス」の題目で発表し、ディスカッション・ペーパーにまとめた。 最後は、帝キネが提携を模索するユニヴァーサル社にかんする調査を行った。帝キネがユニヴァーサル社との提携を模索した目的を明らかにするには、ユニヴァーサル社がなぜ日本に進出してきたかを明らかにする必要があった。これまでの日本映画史言説においてユニヴァーサル社は、日本初の外国映画企業として知られている。だが、なぜ、どういった状況において日本にやってくるかは、問われることがなかった。研究の成果は、論文「トム・D・コクレンとアジア――ユニヴァーサル映画のアジア展開」として発表したほか、台北の中央学術院で開催されたAssociation for Asian Studies in Asia(アジア研究協会アジア会議)、および東アジア文化交渉学会第7回国際学術大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の最大の目標は、大正元年から大正末年までの『大阪時事新報』を調査し、天活大阪および帝キネの上映記録をデータベース化することにあったが、それはおおむね達成された。 ただし、本年度に計画していた九州における天活大阪および帝キネの調査は、次年度に延期した。理由は、帝キネの活動をより明確に理解するため、その活動期間における日本映画産業の状況を把握すべく、帝国キネマと同じ年に横浜という地方都市に設立された大正活映(大活)の活動調査を行い、帝キネが提携を模索するユニヴァーサル社の調査を優先させる必要が生じたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度にデータベース化した天活大阪および帝キネの上映記録の精度をあげる必要がある。 また、本年度に調査を予定していた九州の調査を実行するとともに、台湾における天活大阪および帝キネの事業展開を調査する。 さらに、イギリスのアーバン社の調査も行う予定である。
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Causes of Carryover |
九州出張旅費については、本年度に計画していた九州における天活大阪および帝キネの調査を、次年度に延期したためである。また、東京出張旅費については、本年度に計画していた九州における天活大阪および帝キネの調査を、次年度に延期したため、東京での調査も次年度に延期する必要があったためである。 人件費およびその他の雑費については、アルバイトを予定していた人材が、他機関に就職したため、同レベルの人材を探すところからはじめなければならず、なかなか見つからなかったからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の九州出張旅費および東京出張費は、次年度の調査の際に使用する。 本年度の人件費およびその他の雑費は、次年度以降も継続するデータベース化の作業に使用する。
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Research Products
(7 results)