2016 Fiscal Year Research-status Report
帝国キネマ演芸から見る20世紀初頭の日本映画産業の様相
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15K02207
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
笹川 慶子 関西大学, 文学部, 教授 (30339642)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 帝国キネマ / 天活 / 大正活映 / 映画配給 / 映画興行 / 映画産業 / アジア / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
日治時代の台湾における天活および帝キネの活動について、関西大学図書館所蔵の『台湾日日新報』、早稲田大学演劇博物館など映画関係の研究機関が所蔵する資料、台湾の図書館が所蔵する日治時代の日本語資料を用いて調査分析を行った。 研究の成果は、研究発表"Teujijy Kinema Enegi and Taiwan: Movie Screening at Yoshino-tei (Yoshinokan) in Taipei under Japanese Rule"を国立台湾海洋大学で、研究発表「20世紀初頭の環太平洋映画交渉――アメリカから見た中国と日本」を浙江工商大学で行った。 また、台湾における天活および帝キネの活動を、朝鮮のそれと比較し、論文「帝国日本の映画配給――台北の帝国キネマ演芸と西日本」(『近代大阪文化の多角的研究』なにわ大阪研究センター、2017年)に発表した。 さらに、帝キネと同じ年に横浜に設立された大正活映株式会社(大活)の活動を調査分析し、帝キネと比較した。その結果、1920年代日本の映画産業はまだ分散的かつ流動的であり、東京-京都に集中していなかったことを明らかにした。研究成果として『東洋汽船と映画』(関西大学出版部、2016年9月)を出版した。また、研究発表「『Beautiful Japan』と近代日本の映画産業――東洋汽船の映画ビジネス」を東アジア文化交渉学会で行った。 加えて、帝キネを世界映画交渉の網目において捉えるべく、20世紀初頭のアジアにおける映画の伝播、流通、配給および興行について調査分析した。結果は、論文「アメリカ映画のアジア市場展開と日本の地政学位置――海外映画市場に関するアメリカ政府報告(1903-1919)の歴史的分析」および論文「映画配給のグローバル化――マニラ映画館史(1919-1914)」、論文「パテ社のマニラ進出と映画館――マニラ映画興行史(1909-1910)」に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に行う予定であった九州における天活および帝キネの活動調査、および東京とイギリスの調査は次年度に延期した。理由は、調査を予定していた九州関連資料に不備があることが判明し、資料の所蔵館がその不備を回復するあいだ、使用できなかったためである。2017年度中には使用可能になる予定である。 この予期せぬ出来事により、九州および東京とイギリスの調査は保留となった。作業が停滞している間は、帝キネを別の2つの角度から調査分析した。ひとつは、帝キネと同時代の大阪以外の地方の映画産業の状況を調べること、もうひとつは20世紀初頭のアジア映画市場の網目の中に帝キネを捉え直すことである。これにより帝キネの映画事業を日本のミクロかつマクロに捉え直すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、九州における天活および帝キネの活動を調査するとともに、東京とイギリスの調査を行う。そのうえで、これまで蓄積してきた天活および帝キネの資料やデータをもとに、帝キネの活動の全体像を明らかにする。
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Causes of Carryover |
九州出張旅費については、本年度に調査を計画していた九州の資料に不備があり、資料の所蔵館がその不備を回復する必要が生じ、資料を使用できなかったためである。東京出張旅費およびイギリス出張旅費については、本年度に計画していた九州における天活および帝キネの活動調査を次年度に延期したため、東京とイギリスでの調査も次年度に延期する必要が生じたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の九州出張旅費および東京とイギリスの出張費は次年度の調査の際に使用する。
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