2017 Fiscal Year Research-status Report
帝国キネマ演芸から見る20世紀初頭の日本映画産業の様相
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15K02207
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
笹川 慶子 関西大学, 文学部, 教授 (30339642)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 帝国キネマ演芸 / 日本映画産業史 / 配給 / 大阪 / 台湾 / 上海 / アジア / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
帝キネの活動を世界の映画交渉の網目において捉えるため、20世紀初頭のアジアにおける映画の伝播、流通、配給および興行について調査分析した。既にシンガポール、マニラ、ソウルについては調査報告済みだが、今回はアジア最大の市場として欧米に注目されていた中国の上海を事例に調査した。結果は論文「グローバル映画配給と中国1896‐1914―上海を事例として」や「アメリカ/上海から見た中国映画市場 1896‐1922」などに発表した。また、研究の成果は北京外国語大学や浙江工商大学で行われた国際学術大会およびシンポジウムで口頭発表をおこなった。 次に、そうした20世紀初頭のグローバル化するアジア映画市場に日治時代の台湾における天活大阪と帝キネの活動を位置づけようと試みた。主に台北の帝キネ特約館「芳野亭/芳乃亭」を中心に更なる調査分析をおこなった。結果は論文「20世紀初頭のアジア映画市場形成と台湾」や「アジア映画市場の形成と日台交渉」などに発表するとともに、国立台湾海洋大学で口頭発表をおこなった。同論文は中国語版が中国の出版社から出版される予定である。 さらに帝キネが日本映画産業の近代化にどう向き合っていたのかを考察するため、日本におけるアメリカ映画の受容史をアメリカ在住の研究者とともに調査研究した。結果は論文“The Reception of American Cinema in Japan”をOxford Research Encyclopedia of Literature に、その日本語版を「アジアの中の日本文化」研究センター機関誌に発表した。 最後は、帝キネの消滅後、東京-京都中心に再構築されていく日本映画産業史における大阪の役割を明らかにするため1930年代から50年代の日本映画を調査分析した。結果は「松竹『春琴抄 お琴と佐助』―日本映画のサウンド化と関西弁」などの講演で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2016年度に天活大阪および帝キネの九州市場を調査する計画だったが、調査に必要な新聞資料に不備があり 、所蔵館が資料を修復するあいだ利用することができず、九州調査は2017年度に延期した。またそれに伴い東京とイギリスの調査も延期した。ところが2017年度はアジア市場調査および他のプロジェクトに時間をとられ、また九州の災害やイギリスのテロも影響して思うように調査が進まず、2018年度に調査を継続する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度に計画していた出張資料調査を2018年度におこなう。まずは6月に九州での調査を完遂するとともに、9月にイギリスのアーバン社の調査を行う。 調査後、これまで蓄積してきた天活大阪および帝キネの史料やデータ、研究成果を包括的に見直し、帝キネの活動全体をアジアや欧米を含むグローバルな網目のなかに捉え直す。
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Causes of Carryover |
・理由:2016年度に天活大阪および帝キネの九州市場を調査する計画だったが、調査に必要な新聞資料に不備があり 、所蔵館が資料を修復するのに半年以上かかったため、九州調査は2017年度に延期した。またそれに伴い東京とイギリスの調査も延期した。ところが2017年度はアジア映画市場調査など他のプロジェクトに時間をとられ、また九州の災害やイギリスのテロも影響して思うように調査が進まず、補助事業期間の延長を申請する必要が生じた。申請の結果、許可が下りたため九州とイギリスの調査は2018年度におこなうことにした。 ・使用計画:2017年度の九州出張旅費及びイギリス出張旅費は2018年度の調査の際に使用する。
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Research Products
(13 results)