2017 Fiscal Year Research-status Report
文化財保存修理の観点から仏画「涅槃図」に施される皆金色尊容表現を解明する
Project/Area Number |
15K02209
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
棚橋 映水 吉備国際大学, 文化財総合研究センター, 研究員 (70514024)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 仏画の尊容表現 / 悉皆金色 / 彩色技法 / 保存修理 / 表装の技 / 金工技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究成果について、「涅槃図」の保存修理については9割が完成しており、残り1割については最終仕上げをもって完了とする。平成30年度の研究計画について、修理過程から得られた情報と調査データを基に絵絹の表裏の描き分けについて、検証A.と検証B.を通して結果を取り纏める。まず、検証に必要となる支持体を作る。支持体となる基底材料絵絹は木枠に張り込み、ドウサまたは布海苔を塗布し目止めを行い、乾燥させてから、ベースとなる色を表裏に絵絹全体に施し乾燥させ基盤を作製する。 検証A.について、絵絹の裏側からの検証、修理調査で得られた情報から検討される彩色顔料5種類(①丹、②朱、③辰砂、④朱土、⑤黄土)を裏側から塗布したサンプルを制作する。 検証B.について、検証A.で制作したサンプルの表側から金色(截金と金泥)を施し、乾燥させる。標記検証用サンプルに、自然光と人口光源を照射し表側と裏側の双方での基底材料である絵絹と彩色顔料5種と金色に伴う光源の効果が絵画表現にもたらす影響を検証する。 標記の結果を基に、涅槃の仏身に施される金色を使用する皆金色技法について、基底材である絵絹と赤系顔料5種類と金色が表面に視覚に与える影響やその相乗効果の仕組みを実験考察しながら、皆金色技法と呼ばれる絵画技法を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れている理由について、修理作業に想定以上の時間を要する必要性があった。また研究計画とする絵絹の表裏の描き分けについて、検証に必要となる支持体、基盤となる土台部分が、ドウサ液と布海苔液の配分に誤りが生じ、支持体の目止めと乾燥がうまくいかず、絵絹が風邪ひきの状態となり、絵具の固着が脆弱で剥離や剥落が著しく検証は失敗に終わった。再度改善検討を要し想定以上の時間を必要とした。しかし検証サンプル制作に伴う失敗はあるが、失敗から得られた次につながる情報を基にできる限りの研究成果へとつなげていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の進捗方針について、「涅槃図」の保存修理については、想定以上の時間を要したが、現在は9割が完成しており、残り1割の作業についても、計画通りに進んでおり保存修理については現状問題は無い。 研究を遂行する上での課題について、現在検証サンプル制作が遅れており、これまでの結果と内容を再度見直し再度検証サンプル制作をする。 具体的な計画について、6月、7月にて検証A.裏側の検証サンプル制作、8月、9月、10月にて検証B.表側からの検証実験、赤系顔料が金色(金箔と金泥)顔料絵画技法におよぼず相乗効果について、サンプル制作から彩色技法の効果について検証を試みる。検証A.裏側と検証B.表側の実験結果を基に、11月、12月、1月、2月研究成果の取り纏めを行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、作品修理と同時進行で検証サンプル制作を行う計画であったが、修理作業の遂行に想定以上の時間を要する必要があり、また検証サンプル制作の失敗により、当初の計画の通りに進捗できず、研究計画の見直しが必要となった。 使用計画について、6月、7月にて検証A.裏側の検証サンプル制作、8月、9月、10月にて検証B.表側からの検証実験、赤系顔料が金色(金箔と金泥)顔料絵画技法におよぼず相乗効果について、サンプル制作から彩色技法の効果について検証を試みる。検証A.裏側と検証B.表側の実験結果を基に、11月、12月、1月、2月研究成果の取り纏めを行う。 標記に伴う材料費等については8月、9月を目処に計画的に請求する。研究成果に伴う取り纏めに関わる費用については、12月を目処に計画的に請求する。
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