2017 Fiscal Year Annual Research Report
Building of the Chinese popular literature acceptance history into which a private viewpoint was introduced
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15K02211
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
勝山 稔 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80302199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 浩一 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 非常勤講師 (40587169)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 井上紅梅 / 白話小説 / 井上商店 / 佐藤春夫 / 伊藤貴麿 / 『西遊記』 / 上海 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、白話小説の受容に多大な貢献をもたらした井上紅梅の事跡の中から、先行研究で未解明であった箇所に考証を加え、先行研究の不備を補完した。 今回は新たに当時の日刊紙に記載された記事・広告と紅梅の随筆と用いて、「井上紅梅が、なぜ井上商店を追われ、上海に渡航し、支那風俗研究を開始したのか」という紅梅の事跡研究の中で最も重要な疑問について、綿密な考察を試みた。内容を要約すると以下の通りである。 井上紅梅は「廃嫡」となったものの、紅梅の生計維持のために井上商店の一部の業務を委託していた可能性が高い。突然「廃嫡」となった紅梅を路頭に迷わせてはならぬと言う養父井上安兵衛の計らいであった可能性は大きい。 明治四一年に井上商店は専売特許の縮織繃帯の製造技術を活用して「翁縮夏シャツ」を開発、また本商品を通信販売で全国に販売し更に福引きも取り入れ、一気に全国へ小売り販売を拡大しようと企画している。西南戦争から日清日露と軍需品の扱いで急成長を遂げた井上商店であったが、取り扱いを軍需から民需への転換を図った方策の一つ、それが「翁縮夏シャツ」であった。しかし通信販売という企画は単発で終わっており、少なくとも経営的に成功したものとは言えない。 なお『西遊記』については、西遊記翻訳史において重要な二人の作家について調査・考察を行った。一人は以前その西遊記翻訳史上の位置づけを考察した伊藤貴麿で、今年度は西遊記以外の作品も含めた全体的な調査を行った。この成果は『赤い鳥事典』(柏書房)に「伊藤貴麿」の項目として掲載される予定である。もう一人は佐藤春夫で、7月22日に「西遊記受容史における佐藤春夫の位置」という題目で口頭発表を行い、そこで出された問題点について再検討を加え、12月3日に「佐藤春夫訳『西遊記』に関する幾つかの問題について」として口頭発表を行った。
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Research Products
(6 results)