2016 Fiscal Year Research-status Report
近世~近代における風土記研究と郷土意識に関する研究
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15K02212
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
兼岡 理恵 千葉大学, 大学院人文社会科学研究科, 准教授 (70453735)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 風土記 / 地誌 / 受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、近代における風土記研究を行った。具体的には、文学全集・テキスト類の刊行が盛んとなる明治末~大正期における風土記の本文や注釈書に関する調査、また大正期頃より隆盛した郷土研究・郷土教育と風土記研究の関連等について調査した。その成果を、駒澤大学大学院史学大会(於:駒澤大学 2016.11.12)にて「風土記から見えるもの―地域へのまなざし」として講演を行った。同講演は『史学論集』(2017.5刊行予定)に掲載予定である。 また、海外における風土記研究史について検討した。それらを近年刊行された『播磨国風土記』英訳書であるEdwina Palmer"Harima Fudoki"(Brill 2016)の書評とあわせて、『風土記研究』39号(2017.3)に発表した。 一方、風土記記事自体の検討のため、風土記関連地の調査として『山背国風土記』逸文記載社である京都の水渡神社、下賀茂神社等の実地踏査を行った。これらの成果を論文化し、『朱』(伏見稲荷神社発行の研究雑誌)に掲載予定である。 さらに愛媛において、天山、道後温泉、大山祁神社などの『伊予国風土記』記載地の実地踏査を行うとともに、愛媛大学附属図書館の鈴鹿文庫において、近世期の風土記逸文収集で知られる今井似閑の紀行文『高岡再訪記』を調査した。同本は従来より一部の研究者にしか存在を知られていなかった似閑の自筆写本であり、似閑の伝記研究および古典への憧憬等が窺える貴重な史料である。現在、その翻刻を行い、発表の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近代における風土記受容については、谷森善臣、栗田寛、柳田國男などの、風土記の写本伝播、研究、著書への利用等、それぞれの具体的調査を推し進める必要がある。 また風土記写本の伝播状況データベース構築も、進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度内に、これまでの研究成果を一般書として刊行する準備を進める。また9月にEAJS国際学会(於:リスボン)において、風土記を中心とした古代に関する境界意識について、報告を行う予定である。なお、本報告のリサーチ発表ともいえる研究発表を、第18回国際日本学シンポジウム「イメージと伝達の国際日本学」(於:お茶の水女子大学 2016.7)に行った。 その一方、近代の風土記受容・研究に関する調査を継続して行う。具体的には谷森善臣と風土記書写・伝播への関わり、栗田寛の風土記研究、柳田國男の風土記への関心、「郷土教育」「郷土研究」の潮流と風土記受容の関連などである。
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Causes of Carryover |
予定していた九州方面の風土記関連地実地踏査や、写本調査(蓬左文庫など)が行えず、旅費・複写費などが生じなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度行えなかった実地踏査・写本調査を進める。また研究成果の出版準備のための資料収集を行う。
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