2015 Fiscal Year Research-status Report
中世後期における百科事典的作品と武家故実の相関性に関する基礎的研究
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15K02216
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
小助川 元太 愛媛大学, 教育学部, 教授 (30353311)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 百科事典 / 武家故実 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、『アイ嚢鈔』の新テキストの分析・調査、和訳本『帝鑑図説』電子化、『アイ嚢鈔』『後素集』のデータベース化の作業、『源平盛衰記』『後素集』『塵荊鈔』『筆結物語』の本文分析作業を中心に行った。『アイ嚢鈔』『後素集』のデータベース化はあまり進まなかったが、その代わりに、以下の成果があった。 1.『神道集』をテーマとするシンポジウムにおいて、『神道集』を底流する思想や宗教観を題材とした「『神道集』巻一を読む」と題する研究発表を行った。2.『源平盛衰記』の本文分析作業の成果として、「『源平盛衰記』の日付設定」と題する研究発表を行った。3.和訳本『帝鑑図説』の電子化作業が完成し、その成果として、翻刻本文の公開(巻11~12)を行った。 1は、9月5日に開催された伝承文学研究会大会におけるシンポジウムでの発表であるが、発表のために行った本文分析や引用資料・経典の調査は、『筆結物語』と同系列の物語である『旅宿問答』のような作品が生まれる背景となった、中世における東国武士の教養と宗教観を考える上で非常に役に立った。2については、『源平盛衰記』が平家物語の語り直しを行っている姿勢について、とくに独自の日付設定を中心に分析したもので、百科事典的要素と武家に対する教訓書的な要素を併せ持つ『源平盛衰記』の性格がよりいっそう明確になったものと考えている。今後他の作品や武家家訓などとの比較もしながら、さらに研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
〈研究実績の概要〉でも述べたとおり、『アイ嚢鈔』『後素集』のデータベース化作業は予想以上に進まなかった。また、『アイ嚢鈔』新テキストの奥書に書かれた情報についての調査も難航を極めており、今後も継続した調査が必要である。ただし、『神道集』の問答部分を分析したことにより、中世における東国の武士の基盤にある教養や宗教観を知ることができ、本研究のアプローチの幅も広がった。また、『源平盛衰記』を中世後期百科事典的作品との比較から分析するやり方については、徐々に成果が出始めているため、今後の見通しも明らかになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
『アイ嚢鈔』の新テキストの書写・享受に関わる調査については、今後も継続する。また、今年度和訳本『帝鑑図説』の電子化作業が無事終了したため、『後素集』のデータベース化に本格的に移る予定である。また、今年度は、対象となる各作品の分析を進めつつ、2年後の海外での発表に向けて構想を練りながら、室町後期における百科全書的作品群と武家故実の相関性を計るための具体的なアプローチの仕方を固めていく予定である。
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Research Products
(6 results)