2018 Fiscal Year Research-status Report
古注釈・挿絵を手がかりとした中世伊勢物語受容史の研究
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15K02221
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
青木 賜鶴子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60180139)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 伊勢物語 / 注釈史 / 享受史 / 受容 / 絵巻 / 絵入本 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、前年度に引き続き、スキャンが終わった古注釈書のテキストデータ化、新たに調査した古注釈書の翻字、画像データの集成を行った。 テキストデータ化については、前年度と同様、章段(場面)ごとにまとめる形でデータ化を進めるとともに、三条西家関係の注釈書の翻刻を進めた。当初の予定よりも少々遅れ気味であるが、期間内には終了できる見込みである。 調査については、室町時代製作の中之島香雪美術館所蔵「伊勢物語色紙」を調査する機会に恵まれた。これは同館の開館記念展(平成30年12月~平成31年2月)において初公開されたものであり、いくつかの構図は鎌倉時代製作の和泉市久保惣記念美術館所蔵「伊勢物語絵巻」に通じるほか、他に知られない構図を含んでおり、貴重である。関連して和泉市久保惣記念美術館所蔵本、東京国立博物館所蔵の住吉如慶筆「伊勢物語絵巻」等の実見と調査を行い、複製を入手した。また、国文学研究資料館所蔵の鉄心斎文庫旧蔵本を調査し、複製を入手した。 挿絵については、スキャンした画像と新規に調査し入手した画像について、章段(場面)ごとの画像データを作成し、テキストデータと連動する形で集成している。テキストデータ化がやや遅れているが、最終年度に集中して作業し、研究期間内に集成し終わる見込みである。 以上の成果をもとに、中古文学会2018年度春季大会において「『伊勢物語』の解釈と挿絵―住吉如慶筆「伊勢物語絵巻」を中心として―」の口頭発表を行ない、伊勢物語の挿絵に室町時代の解釈が反映していることを明らかにした。また、論文「『伊勢物語拾穂抄』無刊記本の一本」(『国文学研究資料館紀要 文学研究篇』第45号)を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
古注釈のテキストデータ化に遅れが出ている。 計画では、(1)すでに翻刻されている注釈書のテキストデータ化と、(2)未翻刻の注釈書の翻刻、の二本立てであったが、(1)については、事務補助のアルバイトの都合がつかなかったこともあり、遅れぎみである。(2)については、当初は予定通り翻刻を進めていたが、途中、当該注釈書の翻刻が他所で発表されることが明らかになり、計画を変更せざるを得なくなった。現在は別の注釈書について翻刻を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れている古注釈書のテキストデータ化を重点的に進める。 (1)翻刻のある注釈書についてテキストデータ化し、絵のある章段(場面)ごとに、挿絵と本文データの集成をおこなう。(2)未翻刻の注釈書の翻刻については、三条西家関係の注釈書を翻字し、影印及び写真との照合・点検をおこなう。最終的には、(1)(2)のデータを統合して、鎌倉・室町時代の解釈の特色を明らかにし、それが挿絵にどう反映しているかを検討したい。
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Causes of Carryover |
昨年度は、事務補助のアルバイトの都合が悪くなり、代替が見つからなかったため、人件費が余ってしまった。 今年度はアルバイトとして3人確保することができたため、おもに人件費として使用する。注釈書のテキストデータ化、注釈書の翻字と影印本や写真との照合、データの整理・統合などをアルバイトの補助を得ながらすすめることとする。
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