2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the History of the Medieval Reception of the Ise monogatari as Seen Through Old Commentaries and Illustrations
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15K02221
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
青木 賜鶴子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60180139)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 古注 / 旧注 / 三条西家 / 絵巻 / 絵本 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、前年度までの研究でやや遅れていた、古注釈書のテキストデータ化を重点的に進めるとともに、古注釈書・画像データの集成とまとめを行った。 テキストデータ化については、本研究期間中、(1)すでに翻刻されている注釈書のテキストデータ化と、(2)未翻刻の注釈書の翻刻、の二本立てで進めてきた。(1)は、片桐洋一『伊勢物語の研究・資料篇』(明治書院、1969)、『伊勢物語古注釈書コレクション』(和泉書院、1999~2006)、『伊勢物語古注釈大成』(笠間書院、2005~)所収の翻刻について、絵のある章段(場面)ごとにまとめる形で進め、期間内にほぼ終了することができた。また影印で収められたもののうち、主要なものについてもこれに加えた。これらのテキストデータは、スキャンした挿絵、調査した画像とともに絵のある章段(場面)ごとに集成した。 (2)は、『伊勢物語拾穂抄』延宝8年版本と、それに先立つと考えられる写本の『伊勢物語拾穂抄』(異本)を翻刻し、近く公刊する予定である。北村季吟の注釈書『伊勢物語拾穂抄』の版本は翻刻があったが入手し難く、写本の『伊勢物語拾穂抄』(異本)は鉄心斎文庫本が紹介されていたものの(『鉄心斎文庫伊勢物語古注釈叢刊』に影印で収録)、翻刻は初めてである。今回の翻刻では、鉄心斎文庫本の親本と考えられる大阪大学附属図書館本を底本とし、他本と校合して最善の本文を示すようにした。 以上の成果をもとに、共著『住吉如慶筆 伊勢物語絵巻』(伊勢物語絵研究会編、思文閣出版、2019)を出版した。全体にわたって討議しながら検討し、担当した場面について、その絵が『伊勢物語』本文のどの表現に基づくのか、また古注釈のどの解釈に基づくのか、他の絵巻・絵本と比較しながら詳細に解説した。
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