2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02235
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
小野 泰央 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (90280354)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近世漢詩文注釈 / 標注 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世における詩文標注者のなかでも、遯庵の注釈活動は群を抜いている。彼の注釈の内、唯一の抄物である万治四年(一六六一)の『頭書錦繍段抄』を始めとして、寛文四年(一六六四)の『錦繍段首書』、貞享元年(一六八四)の『錦繍段首書』、元禄十五年(一七〇二)の『錦繍段詳註』の標注を制作している。その『錦繍段』は、遯庵にとって創作する上でも重要な詩集であった。彼には『遯庵詩集』という詩集と『遯庵先生文集』という詩文集が存在するが、それら詩には、『錦繍段』の詩句引用が色濃く見られるからである。 さらにそれらのなかには、『錦繍段』注釈と関連する受容も見られる。遯庵が『錦繍段』の押韻・平仄を参考にしながら作詩をしていたとするならば、それは構造的に一詩を受容していたということである。そもそも遯庵は題を設定する場合、『錦繍段』の題を用いている場合がある。同様に詩の押韻をする際にも、遯庵は『錦繍段』を活用していると考えらえる。遯庵はの『漢和三五韻』は漢句の押韻ためでもあったはずである。同様に『錦繍段』標注も作詩のための語彙・詩句集であったと考えられる。そもそも、『首書錦繍段』『錦繍段詳註』の『錦繍段』本文には、それまでの「錦繍段抄」および遯庵自身の『頭書錦繍段抄』になかった題の上に墨の陰刻で、韻字が新たに示されている。そこには押韻の意識を見ることができる。その入り組んだ念入りな受容は、やはり彼の四度の注釈によって培われたものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近世漢文注釈者を代表する宇都宮遯庵の注釈態度について大方の実態を解明できている。
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Strategy for Future Research Activity |
時代を遡って、藤原惺窩の注釈態度について解明する。
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