2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02237
|
Research Institution | Shukugawa Gakuin College |
Principal Investigator |
竹下 麻子 (三木麻子) 夙川学院短期大学, 児童教育学科, 教授 (60544947)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 陽子 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (10116288) [Withdrawn]
岸本 理恵 尾道市立大学, 芸術文化学部, 准教授 (10583221)
惠阪 友紀子 京都精華大学, 人文学部, 講師 (90709099)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 歌合 / 宇多院 / 物名 / 女郎花合 / 菊合 / 漢詩典拠の和歌表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
『古今和歌集』の表現が古典和歌の基盤となったことは自明であるが、『古今和歌集』的表現を形成した和歌活動の一つに「歌合」がある。我々は、歌合記録が完全に残されているわけではない平安初期の小規模歌合を対象として、それぞれの歌合の目的を解明し、古今集的表現のできるまでを明らかにしようとしている。宇多院歌壇が『古今和歌集』の基盤を醸成する中で、どのような試みが行われたか、『古今和歌集』の和歌表現技法にまで至らなかった試みを解明し、古今集表現の研究に資するものとしたい。 和歌表現まで詳細に検討されていない先行歌合研究の中で、内裏歌合であっても確立した和歌の披露とはいえない面があったことはあまり認識されていない。我々は歌合和歌注釈の過程で、それぞれの歌人が表現を模索するなか、そこには未成熟な表現も、実験的試みも混在していることを確認した。 現代研究者の古典和歌理解は古今集的表現を基としている。それが確立していない初期歌合においては、どのような方程式で和歌を読み解けばよいのか、それぞれの歌合が意識していた表現目的があったと仮定してそれを読むべきであることを認識した。 古典和歌表現と、それを記す文字が確立していこうとする時代に、記録される和歌と、披講される和歌が併存する歌合の場が、和歌の進展を示す最新の場であったことにもっと着目すべきであることも、五つの歌合をまとめるなかで再確認された。先行表現の継承を前提とする古典和歌の有り様は、そもそも、和歌が「場」の文学であったこと、それは歌合という場での共有を基とすることが、これまでの研究を通して示すことができた。これらの研究成果を著書としてまとめ、現在は初稿の校正中であり、秋の出版を予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出版原稿をまとめ校正中である。 並行して宇多院周辺の小規模歌合をさらに研究中であるが、先行研究が少なく、従前とは異なる視点で歌合の有り様を検討しているため、討議に時間を要している。当初、多くの和歌を含む、先行研究のある同時代の歌合を検討し始めていたが、今まで注目されなかった、成果があったと見なされていないものを取り上げる必要があることを、これまでの研究結果として認識したためである。 単に、和歌の注釈に終わらず、宇多院歌壇が『古今和歌集』の基盤を醸成する中で、どのような試みが行われたか、『古今和歌集』の和歌表現技法にまで至らなかった試みを解明し、古今集表現の研究に資するような視点を持って検討するよう努めている。当初の課題とした五つの歌合が出版まで至ったことは順調な成果であるが、問題意識が明確になった分、さらに小規模歌合を検討する必要もでてきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでは、「寛平御時菊合」「亭子院女郎花合」「宇多院女郎花合」「朱雀院女郎花合」「宇多院物名合」の研究を行ってきた中で、初期歌合における和歌の読み解き、表現のあり方について明らかにしてきた。今後は、宇多院周辺で行われた「是貞親王家歌合」などの歌合について解明することで、平安初期の和歌の有り様をさらに考察してゆきたい。
|
Causes of Carryover |
実見調査に行く機会が多く取れなかったことと出版の際に掛かると予測している費用が平成31年(令和元年)度に順延されていることがある。平成31年(令和元年)には、宇多院周辺の歌合資料の収集に経費を費やす計画である。
|
Research Products
(1 results)