2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02255
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
西田 正宏 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (00305608)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 地下歌人 / 古今集注釈 / 古今伝受 / 宗祇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度から継続して行ってきた小澤蘆庵の古今和歌集の注釈書『古今注解』の検討を進めるとともに、昨年度予定していたが、関係機関の都合で資料閲覧ができなかったため、研究できなかった中之島図書館蔵「古今集諸抄」と国会図書館などに蔵せられている地下歌人・望月長孝『古今仰恋』の比較検討を行った。 特に「古今集諸抄」のうちの『古今連著抄』、また同じ中之島図書館に蔵せられている別の『古今連著抄』、さらに宮内庁書陵部に蔵せられているものを加え、それぞれのテキストの比較を行い、まずテキスト自体のもつ問題点を洗い出した。 その後、ともに宗祇流の『両度聞書』を利用している点に注目して、『古今仰恋』との注釈の様相について比較検討を行った。結果として、辞書類では『古今連著抄』は、宗祇の門弟である宗碩の注釈とされてきたが、その点については、望月長孝を含めた地下歌人の関与の可能性があることが判明した。以上のことは、「地下歌人の古今集研究―『古今連著抄』をめぐって―」(『国文学論叢』第六十二輯(日下幸男教授退職記念号)、2017年2月))という論文にまとめた。 また12月にシンポジュームの講師として「古今伝受とは何か」という題で発表した。本課題の近世の古今集の注釈を中心に、古今伝受史の全体を見通した。この発表をもとに、「古今伝受」の近世における享受史の論文と、古今伝受と実作の関係を論じた論文を、現在執筆中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、思いがけないことで、当初予定を変更したが、今年度は、発表の機会にも恵まれ、当初予定していなかった「古今伝受」についても検討を加えることができた。 また『古今連著抄』の研究は、それ自体は、結果的に一注釈書を取り上げて、注釈史上に位置付けるという定型的な研究となってしまったが、そこで多くの宗祇流の注釈書を検討したので、その知見は、来年度の研究に活かせると思われる。 以上の点から考えると、今年度は当初予定より、進んだと判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
上に記したように、来年度はまず「古今伝受」に関する研究からはじめ、それを論文化する。また河瀬菅雄の『古今見聞抄』の研究にも着手する予定である。 また初年度より始めていた小澤蘆庵『古今注解』について、注釈史上に位置付けるということもしなければならない。 「古今伝受」の研究にも研究が拡がってしまったため、より多くのことに取り組む必要があるが、すべて本研究課題である近世古今集注釈史の研究の一環ということになる。
|
Causes of Carryover |
昨年度、中之島図書館が閉館になっていたため、調査に十分な時間がとれず、大幅に残額が生じてしまった。 今年度はおおむね良好に、予定通り使用したが、11月に体調を崩し、当初2回予定していた東京への調査が1回となってしまった。そのためその程度の残額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、文献複写も、調査も計画通り行う予定である。また今年度生じた残額は、調査旅費として使用する予定である。
|