2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02256
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
河合 眞澄 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (00169674)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 絵入狂言本 / 役者評判記 / 挿絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、いまだ解明の進んでいない江戸時代の演劇資料に見られる画像資料を中心として、江戸時代の歌舞伎の上演実態を探っている。 そのため、絵入狂言本(挿絵入りのあらすじ本)の挿絵および役者評判記(上演演目に関する記事を中心とする役者評の集成)の挿絵について、今年度は4名の研究協力者とともに研究会を6回開催し、両者の関係や文字資料との突き合わせを行った。その結果、両者が密接に結びついている例が多く、本屋(江戸時代の出版社)の枠を超えて流用されている場合があること、文字資料と整合しない部分があることなど、新たな知見を得た。 また、12月には2名の研究協力者とともに絵入本学会主催の国際シンポジウムに参加し、江戸時代の画像資料に関する広範な研究発表を聴講することにより、今後の研究に裨益する情報を獲得した。 現代の歌舞伎に継承されている演出についての上演実態調査も十数回にわたって実施し、江戸時代の資料に見られる演出の継承と変化を確認した。 如上の研究成果は、研究代表者の公開講演、研究協力者3名の論文発表・口頭発表によって世に問うている。研究代表者の公開講演は日本史研究における演劇資料の活用を推進する内容であり、江戸時代の日本史研究資料としての演劇資料の重要性を認識されることとなった。研究協力者の論文発表は、絵入狂言本の翻刻や出版事情との関係を述べるものであり、従来未翻刻であった資料を紹介し、その考察が出版文化にまで及んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、共同研究会を6回にわたって実施して意見を交換し、従来見られなかった数々の新たな知見を得ている。 また、その成果を公開講演・論文発表・口頭発表として公開している。 資料収集については、各地の図書館の所蔵する絵入狂言本の写真・参考文献のコピー等を入手し、順調に進んでいる。 データ化については企画段階であり、今後データ項目を詳細に検討して実現を図って行くこととしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も、平成28年度に続いて江戸時代の演劇関係画像資料の収集に努め、研究協力者とともに共同研究会を数回実施して、資料の持つ意義についての知見を深めて行く予定である。 収集した画像資料は年次を追って整理し、その変遷についても考察する。 現代の歌舞伎の上演実態調査も引き続き実施し、江戸時代の上演実態をより鮮明にする手がかりとして行く。
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Causes of Carryover |
資料収集が前年度にかなり進んでいたため、今年度の資料収集関連の支出額は予定を下回った。 同じく資料収集が前年度にかなり進んでいたため、研究協力者への資料所蔵機関への出張依頼回数が予定より少なくて済んだため、人件費・謝金の項目の支出額が予定を下回った。 前年度からの繰越額が相当あったことと相まって、次年度使用額が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は22,541円と小額であるため、今年度と同程度の支出計画により、平成29年度(最終年度)に使い切ることができる予定である。
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