2016 Fiscal Year Research-status Report
冷戦アジアの「革命」とベトナム戦争における「日本語」の役割に関する研究
Project/Area Number |
15K02268
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高 榮蘭 日本大学, 文理学部, 教授 (30579107)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ベトナム戦争 / 文化運動 / 講和条約 / 情報統制 / 革命 / メディア / 在日文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、冷戦期の東アジアにおいて、帝国日本の痕跡である「日本語」が旧植民地の支配システムの基盤になっている側面だけが注目されてきた。しかし、本研究では、「日本語」が新しい支配者である軍事独裁への抵抗の言説を支える役割も担っていたことに焦点をあて、「日本語」の複雑な役割について研究を進めている。 2016年度は関連資料の調査をしながら、以下の二つに中点をおいて、研究活動を行った。①他の地域や言語圏の研究者と東アジア冷戦と革命・抵抗運動をめぐる共同研究の基盤をつくった。E・Mack教授、平野克弥准教授、Setsu Shigematsu教授、金杭准教授、千政煥教授連携をとりながら、ワークショップを開催および参加した。"The Movement of Individuals and the Politics of Cultural Memory Symposium "(UCLA)、"When Lit. Profs Walk the Nuclear-Restricted Zone Symposium "(UCI)、“UCLA Trans-Pacific Symposium: The Politics of Life and Death”(UCLA)、「嫌悪と民主主義」(延世大学)、“Empire and Others Symposium”②複数言語による領域横断的な成果の公表を試みた。李惠京・ Vladimir Tikhonovさんらとの共同研究の成果『1905年ロシア革命と東アジア三国の反応』が12月に刊行された。6070研究会を計3回開催した。6月24日「三島由紀夫と60年代」報告:田尻 芳樹・遠藤不比人。9月30日「文化としての冷戦」報告:服部訓和・細田晴子。11月19日「『平和なき「平和主義」 戦後日本の思想と運動』合評会」提題者:川口隆行・黒川伊織、著者の応答:権赫泰。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
編者として企画の段階から参加した『検閲の帝国』韓国語訳が、韓国政権の文化検閲への批判の文脈で大きな話題を呼び、同年12月に韓国『ハンギョレ新聞』によって人文書ベスト10に選ばれた。韓国の文学・文化研究のなかで新たな議論の土台作りに大きな貢献が出来た。韓国聖公会大学東アジア研究所の研究チームによる『二回目の「戦後」 1960~1970年代アジアと遭遇した日本』刊行に参加した。5月刊行予定だが、韓国における日本語ブームとベトナム戦争の関連についての調査が反映された論文である。冷戦期の東アジアにおける日本語の役割の問題について、異なる地域、異なる空間を生きる研究者とネットワークを構築することにより、単独の研究では実現しえなかった多元的な側面からの研究基盤作りが固まりつつある。その意味において、最初に提出した研究目標を充分に達成することが出来たと思う。
|
Strategy for Future Research Activity |
①1960年代から1980年代に、日本語で出された沖縄の文化運動・ベトナム戦争・文化大革命・韓国の民主化運動の支援を目的とする書物、チラシ、講演会の記録、運動グループの記録などの資料を集める。今年の6月“UCLA Trans-Pacific Symposium”、10月延世大学で行われる予定の「革命と媒体」という国際会議に参加し、その成果を発表する予定である。 ②国際会議を企画・開催する予定である。韓国成均館大学校文科大学CORE事業団・韓国細橋研究所と連携する形で日韓人文学フォーラムを立ち上げ、2017年5月19日と20日に国際会議を本部校である日本大学文理学部で開催する予定である。6月には、大妻女子大学五味渕典嗣教授と共催で、成均館大学の千政煥教授、ワシントン大学E・Mack教授とともに、日本からの情報の発信地であった韓国釜山を訪れ、1979年に起きた民主化抗争の問題と日本語の問題について話す企画を準備している。
|
Causes of Carryover |
日韓人文学フォーラムを準備していたが、韓国側の資金が充分ではなく、実現できなかった。2017年度開催をむけて調整中である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年5月19日~20日まで、日韓人文学フォーラムという国際会議を開催する予定である。
|
Research Products
(15 results)