2016 Fiscal Year Research-status Report
初期近代イギリス演劇における舞台のカーテンの使用方法に関する研究
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15K02289
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市川 真理子 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80142785)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 舞台 / オリジナル・ステイジング / カーテン / ト書き |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も、大別して、次の三つの営為から構成される研究を行った。1.劇テクストの調査・分析によるデータ収集、2.関連する諸研究の調査および研究、3.論考の作成および理論の構築。昨年度に行った調査や研究を受け、本年度は、上記のうち、主に3に力を注いた。以下、それぞれについて記す。 1. 劇テクストを一つ一つ調査して、中央開口部が何らかの形で使われるシーンや、カーテン等に言及するト書き、台詞、書き込みなどを収集し、カーテンの種類や使用方法について分類した。ファクシミリで間に合う作品は国内で分析し、直接オリジナル・テクストを調査する必要のあるものについては、British Library と Folger Shakespeare Library で調査した。 2. データを有効に分析し議論を深めていくために、関連諸分野の調査および研究を行った。当時の劇場や劇団に関する研究や、劇テクストの出版や印刷に関する研究など、初期近代イギリス演劇に関する諸研究は当然ながら、カーテンの使用には文化的側面があるので、美術史や宗教史なども視野に入れた調査および研究を行うよう心掛けた。イギリス演劇全般にわたる研究書も広く、新旧を問わず、対象とし、特に古いものに関しては、British Library, Folger Shakespeare Library 等で閲覧したり複写したりした。 3.こうした調査の中で Ben Jonson の作品に有益な情報やヒントが見つかった。とりわけ、Bartholomew Fair における中央開口部の使用方法に関して、定説とは異なる新たな見解を持つに至り、その見解を主張する論文を書くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
劇テクストを分析しながら、いくつかの作品について、従来定説とされている見解に対して疑念を抱き、新たな仮説を立て、それを論証するに足るいくつかの有益な証拠を発見することができた。それらに基づき、特に Ben Jonson, Bartholomew Fair のホープ座で行われた初演のステイジングに関する論考の作成し、英米のオリジナル・ステイジングや関連諸分野の研究者たちの有益なリヴューを得た。現在、国際的なジャーナルに投稿中である。 また、中世演劇と近代初期演劇、そして王政復古期の演劇の断絶と継続に関しても多くの有益な事例を発見し、新たな視点を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の完成まで、下記の3種類の調査研究を継続する。 (1)劇テクストの調査・分析によるデータ収集の継続:データの収集とその整理を続ける。可能な限り、オリジナルテクストに当たる。そのため、British Library, Huntington Library, Folger Shakespeare Library などの研究図書館での調査を行う。 (2)関連する諸研究の調査および研究の継続:上記のような初期近代イギリス演劇関係諸分野をはじめ、美術史や宗教史の分野にまでいたる範囲の研究書や論文を対象とする調査および研究を継続して行う。国内で入手することのできない文献は、British Library, Folger Shakespeare Library 等で閲覧したり複写したりする。 (3)研究成果の発表:収集したデータを分析しながら、ある問題について考えがまとまるごとに、その問題を扱う研究ノートや論文を書く。これまでの研究に修正の必要がないかということなども十分に考察したい。それらをベースに オリジナル・ステイジングや関連諸分野の研究者たちと議論を重ねる。また、国際雑誌に投稿したりすることで、広く初期近代イギリス劇の研究者たちからのフィードバックを得ることができるようにする。 最終年度であるので、これまでの研究を全体的にまとまりのあるものに仕上げるよう努める。
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Research Products
(1 results)