2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02294
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
松崎 毅 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (40190441)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Andrew Marvell / Marchamont Nedham / John Hall / James Harrington |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度はAndrew Marvellの政治詩 “An Oratian Ode upon Cromwell's Return from Ireland”(1650)の回覧状況に集中して調査を行った。具体的には、執筆当時の交友関係が疑われる Marchamont Nedham, John Hall, George Villiers, second Duke of Buckingham, Algernon Percy, tenth Earl of Northumberland, James Harrington 等の伝記資料と著作の調査、ならびに、“Horatian Ode”とテーマ的な関連性の深い John Hall の The Grounds and Reasons of Monarchy Considered, James Harrington のThe Commonwealth of Oceana, Marchamont Nedham の The Case of the Commonwaelth of England 等の著作の読み込みを行った。ローマの詩人 Lucanus の Phrsalia、イタリアの政治思想家 Machiavelli 等の影響が共通して見られるものの、彼らの王制から共和制への権力の移譲に関する言説のなかには Marvell と近似するものが多く見られた。特に注目されるのは、ジャーナリスト・パンフレット作者で、 Marvell とは逆に議会派から王党派に変節した Marchamont Nedham で、その著作には、王制主義者や共和制支持者といった政治的なラベル付けの不可能な、流動的でときに逆説的な言説が多く含まれており、“Horatian Ode”との深い関連性があるとの考察結果を得た。 究極的には17世紀のイギリス詩における回覧文化という問題を追及する姿勢で臨んでいるが、個々の作品について回覧を推測する根拠はどこに潜んでいるか分からないため、伝記的資料と各著作の読み込みに膨大な研究時間を費やすことになった。ただ、Amdrew Marvell の“Horatian Ode”に集中して研究を遂行したため、この作品についてはある程度の研究成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
究極的には17世紀のイギリス詩における回覧文化という問題を追及する姿勢で臨んでいるが、個々の作品について回覧を推測する根拠はどこに潜んでいるか分からないため、伝記的資料と各著作の読み込みに膨大な研究時間を費やすことになった。ただ、Amdrew Marvell の“Horatian Ode”に集中して研究を遂行したため、この作品についてはある程度の研究成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度が最終年度となるため、まず昨年度の“Horatian Ode”に関する研究成果を研究論文としてまとめ発表する。加えて、“Horatian Ode”の研究を通じて明らかになってきたことは、この作品が回覧されたとすれば、以前検討した Katherine Philips のそれのような、王党派という政治的旗色が鮮明で結束力の強い単一の文学サークルではなく、複数のサークル、あるいは王制主義や共和制支持といった政治信条に拘ることなく新たな政体のありかたを模索していた一団の文人であったであろうということである。この点をより明確にするため、最終年度はひきつづき Marchamont Nedham, John Hall, James Harrington 等の著作に当たるとともに、ルネサンス以来の回覧文化が、17世紀という政治的動乱の時代に至ってどのような変質を余儀なくされ、初期ジャーナリズムを含む出版文化に取って代わられていったかという究極的な問題を考察する。Andrew Marvell において、この変質と以降を体現するのは“First Anniversary”であるが、この作品の出版の経緯をより詳しく調べることはこの研究に資すると考えている。また、これまでの研究資料の多くは電子媒体で入手できたが、伝記的資料や一部の手稿は現地調査による確認が必要であるため、連合王国への渡航調査を計画している。そのうえで、これまでの研究成果を報告書として執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
テクスト資料については、多くがすでに共同購入してあるデータベースの Eearly English Books Online からPDFで取り込むことができたため、書籍費が予想したほどかからなかった。また、テクスト資料に当たるのに研究時間の大半を費やしてしまい、伝記資料や一部手稿の調査のための連合王国への渡航調査を31年度に回したため。
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