2018 Fiscal Year Annual Research Report
Anti-Modernism in Modernist Literature--A Study on the Relationship between Literary Modernism and Catholicism
Project/Area Number |
15K02303
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野谷 啓二 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80164698)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | カトリシズム / モダニズム文学 / べロック / チェスタトン / カトリック経済思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
モダニズム文学の担い手が反近代(アンチモダン)思想に依拠するのはパラドックスに見えるが、反体制ということでは一貫している。カトリックとなるモダニストが多いのは、体制派の悪弊の淵源をプロテスタンティズムに見出し、それが生み出した個人主義と自由放任型資本主義を拒絶しようとしたからだ。カトリックの共同体主義によって個人主義から逃れ、表現としてはナショナルなものを超越し、ヨーロッパ全体、ひいては世界文明を意識した作品を理想とした。テイトが主導したアメリカ南部とマクナブが精神的主柱だった英国の帰農運動は反中央集権、反産業資本主義、反進歩史観を信奉するカトリック社会論に根差しており、土地所有を通して共同体を再生させようとする運動だった。The New Ageの編集者だったA.R.オリッジはカトリック信者ではなかったが、彼のギルド社会主義思想には中世主義的な特質もあり、エリオットやパウンドから高く評価された。彼の雑誌にはチェスタトン、べロック、パウンドも寄稿した。オリッジが経済学について述べた「経済学はコストを最小に、生産とサービスを最大にする方法を考える学問であり、関心は富の生産のみにあり、人間的状況は考察しない。産業社会では労働市場から適切な(技術などを備えた)労働力を調達した方が安くつく(労働のコモディティ化)ため、労働者は動産奴隷から賃金奴隷化する」という見解は、今日でも傾聴に値しよう。このような確信は、ドミニコ会士のマクナブのヴィジョンにも見られ、神学上は近代主義に対抗し、経済学としては私有財産分配主義に行きつく。モダニズム文学の思想的系譜は、カーライル、ラスキン、モリスの産業社会における人間の非人間化という問題意識を受け継ぎ、レオ13世の回勅『レールム・ノヴァルム』を経由して、盛期モダニズムのエリオット、パウンド、そして神学モダニズムのジョーンズに至る、ということになろう。
|
Research Products
(2 results)