2017 Fiscal Year Research-status Report
文化的記憶としてのイギリス多文化主義についての研究
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15K02308
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
三村 尚央 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (90514795)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 記憶研究 (Memory Studies) / 集合的記憶(collective memory) / カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro) / 移民(immigrants) / ノスタルジア / イギリス文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、本研究課題である文化表象における記憶の問題のなかでも、特に文学に焦点を当てることができた。平成29年度の前半4月より9月頃まで、研究代表者の中心的な研究対象であるカズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro)についての3回の研究会を集中的に開催した。多くの文学研究者と議論を交わしながら、記憶表現を含めたイシグロ作品のさまざまな側面についての議論を深めることができた。そしてその総括として8月にはカズオ・イシグロの『私を離さないで』(Never Let Me Go)をテーマとしたシンポジウムを開き、イシグロの研究者たちとともに理解をさらに深化させることができた。その中でイシグロの文体上の表現技術がイギリス文化に根づく「庭園と記憶」という主題の系譜に連なるものであることを確認した。 また記憶の文化研究に関するイギリスの研究者による書籍の翻訳も出版した。これにより、記憶の文化研究について広く一般に浸透させるための基礎整備を進めることができた。この訳書の出版に伴って、記憶の文化研究についてのイベントに参加する機会もあり、文学や哲学、人類学の知見を含めた、包括的な記憶の文化研究の可能性について検討する多くの機会を持った。 その後、10月にイシグロがノーベル文学賞を受賞したことで、イシグロについての記事を執筆したり講座を担当する機会が増えたが、4月より9月頃に行った研究活動の最新の成果を盛り込みながら発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞による文学関連の調査研究に予定外の時間を割かざるをえなくなった影響もあり、当初予定していた移民船到着の記念行事についての調査を十分に行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を延長してこれまでの遅れを取り戻した上で研究課題に関する追加の調査を行う予定である。まずは当初予定していた移民船エンパイア・ウィンドラッシュ号到着の記念行事の過去の実施状況についての調査をおこなう。さらに、延長したことにより2018年に6月に行われるウィンドラッシュ号到着75周年記念式典にも参加できる見通しが出てきたのでこちらに関する調査も行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた移民船到着の記念行事についての調査を平成30年度に延期したため次年度使用が生じた。平成30年度には、予定していたイギリスのロンドンでの調査に加えて、バーミンガムで行われる移民船到着の70周年記念行事の調査費用に使用する予定である。
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