2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Cultural Memory Study of Multiculturalism in the U.K.
Project/Area Number |
15K02308
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
三村 尚央 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (90514795)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 記憶研究 (Memory Studies) / イギリス文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はイギリス国内および国外に向けて1950 年代以降盛んに展開された「多文化国家」としてのイメージがいつ、どのように形成されたか、ということとそのイメージが「多文化国家イギリス」へと国民をまとめ上げる文化装置として持つ機能を分析、記述することである。 最終年度である本年度は「儀式」あるいは「記念行事」を通じた記憶の継承についての研究を進めた。そして、実地調査としてエンパイア・ウィンドラッシュ号の到着70周年を記念して、バーミンガムの教会で行われた式典を訪れた。そこで確認できたのは、ジャマイカなどカリブ地域からの移民の子孫としてイギリスで生まれ育った世代の彼らが、それぞれの親や祖父母たちについての個人的な経験を自分たちの共同体を支える集合的記憶として共有していることであった。世代と血縁の間での断絶を超えるために、個別的な記憶が「私たち」のものとして共有されて、彼らの共同体の現在を維持してゆくための仕組みであることが確認できた。 本研究での全体期間を通じて特に注目してきたのは「文化的記憶」(cultural memory)と「第二世代」(second generation)という論点であった。文化的記憶という理論モデルは、個人的なものと関連づけられがちな記憶が人びとのあいだで共有されてゆく仕組みを可視化したものである。また「第二世代」問題は共同体内で家族も含めた成員の世代間での記憶の継承に焦点を当て、親や祖父母世代の経験が子孫へと伝えられてゆく仕組みやそのための媒体について検証しており、「儀式」や「口承」(oral history)、「記憶の物品」(testimonial objects)といった要因が着目されるが、本研究では特に「儀式」の役割についての分析と理解が深められた。
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