2015 Fiscal Year Research-status Report
トールキン作品における「先史」観の未刊草稿原稿による解明
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15K02311
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
辺見 葉子 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (40245428)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | J.R.R. トールキン / English and Welsh / アーカイブ調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、英国オックスフォード大学ボードリアン図書館スペシャルコレクションのトールキンの手稿原稿の調査を実施した。また、調査過程で存在が明らかになったオックスフォード大学アーカイブの記録ファイルの調査も行った。 2006年5月にアメリカ、カラマズーで行われる国際中世学会で、トールキンの"English and Welsh"の手稿原稿調査について口頭発表する予定になっているため、その報告の準備のために確認が必要な箇所の調査が中心となった。"English and Welsh"は1955年にオックスフォード大学で、O'Donnellレクチャーシリーズの第一弾として講演が行われたが、講演後にすぐに出版されるはずの講演原稿の出版は1963年になって実現している。1955年の講演で実際に音読されたと思われるテクストの特定、その出版に向けての改訂作業とその時期の確定、出版稿の校正の詳細など、複数の課題が残っていた。 今までのトールキンの手稿調査においては、トールキンがオックスフォード大学宛に講演原稿を提出した時期が不明であったのだが、スペシャルコレクションおよびOUPアーカイブのアーカイヴィストとのやりとりの中で、今まで所在が知られていなかった大学側の記録ファイルの存在が明らかになった。 このファイルの閲覧が可能になったおかげで、トールキンが講演を行った1955年10月から1963年の出版にこぎつけるまでの経緯、またトールキンがO'Donnellレクチャーシリーズの講演者として任命された1952年から1955年に講演が行われるまでの経緯も明らかになった。 この"English and Welsh"の原稿の出版までの時間経緯とその間の事情については、新しい研究発見として、2016年5月の国際学会での発表がトールキン研究者から歓迎されると確信しており、大変実り多い調査となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オックスフォード大学における調査は、短期間だったものの、調査の進展に大いに寄与する書類の存在が明らかになったことで、研究成果としては非常に満足の行くものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の調査結果により、"English and Welsh"の校訂本を作るにあたっての道筋が見えてきたので、残された課題(トールキンのメモにある、ブリテン島の先史時代に関する歴史参考文献の特定や、トールキンの原稿内容との関係調査など)を順次、アーカイブ調査の継続により進めていきたい。また、今回発見された大学の記録ファイルは、3月には最低限の情報を得る時間しかなかったため、今後より時間をかけて調査したい。
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Causes of Carryover |
3月の英国オックスフォード大学図書館での調査は、学務他との関係、またオックスフォード大学のイースター休暇との関係で、短期間の滞在となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は、夏期により長期滞在での調査を行う予定であり(可能ならば、英国オックスフォード大学と、米国マーケット大学の両方)、また5月の国際学会発表の滞在費も科研費から支出したいと考えている。
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Research Products
(2 results)