2015 Fiscal Year Research-status Report
18世紀イギリスにおける社交空間/消費空間誕生に関する歴史的研究
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15K02315
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
吉田 直希 成城大学, 文芸学部, 教授 (90261396)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 18世紀 / イギリス / 啓蒙主義 / 公共圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀初頭のイギリスでは、宮廷や教会の権威が比較的弱く、公平無私な「公衆」が次第に文化形成の中心的役割を担うようになった(ハーバーマス)と考えられている。もちろん、この合理的な公衆は悪徳に満ちた「私」と表裏一体であり、公私の緊張関係に焦点を当ててみるならば、上品なブルジョワ知識人がこの時代の文化的空洞を埋め合わせるべく俄に登場し、近代イギリス公共圏が誕生したと単純に考えることはできない。本研究では、クリフォード・シスキンらによる18世紀啓蒙主義に関する最近の代表的研究(This is Enlightenment, 2010)を批判的に検討することにより、公共圏誕生の複雑な歴史性を解明し、同時にその担い手である近代的主体の特性を文学研究の視点から解明するものである。公共圏文化の歴史を経済・科学・宗教の観点から検証するために、今年度は特に、文化の商品化が消費空間の誕生に果たした役割を検証した。新しい都市文化を求める動きの中でコーポレーションやさまざまなアソシエーションがどのように誕生したのか、また、消費空間の多様性をヴォクソール歓楽園とヘンデル、トマス・アーン、ホガースの演目、ジェイムズ・ラッキントンによる量販古本業と女性読者に焦点を当てて考察した。さらに、経済学と文学の一体化を特徴とするデフォー、スウィフトの作品群を取り上げ、イギリスでの信用経済を推進した「小説」の役割について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初検討する予定であった The Pigs Petition against Bartholomew-Fair (1712) James Lackington, Memoirs written by himself (1790) William Hone, The Every-Day Book (1826-7) のまとめが終了していない。 また、研究成果をASECSにて発表する予定であったが、日程が合わず参加できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の学会で、研究成果を発表し、今後の研究計画を修正する。さらに、文化の商品化が、イングランドにおける信用経済をめぐる新しいジャンル、すなわち経済学の誕生と密接に関係している点を精査する。
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Causes of Carryover |
ASECSにおいて研究成果を発表する予定であったが、日程の調整がつかず、報告を延期せざるを得なくなってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究会を開催し、研究成果を取りまとめて発表する。
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