2016 Fiscal Year Research-status Report
ワイルド裁判後のイギリス性科学の展開と文学 ーエリス、シモンズ、カーペンター-
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15K02322
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Research Institution | Wako University |
Principal Investigator |
宮崎 かすみ 和光大学, 表現学部, 教授 (10255200)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ジョン・アディントン・シモンズ / オスカー・ワイルド / 性科学 / 同性愛 / リヒャルト・フォン・クラフトエビング / ハヴロック・エリス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はジョン・アディントン・シモンズについての研究が一定の進展を見た。当研究課題の研究対象人物の一人、シモンズを重点的に研究した。研究者にとって、ハヴロック・エリスとカーペンターはすでにある程度の研究蓄積があるが、シモンズを本格的に研究したのは初めてであったが、近年貴重な資料が刊行されたこともあり、封印されていたこの性の先駆者の相貌が明らかになりつつある。外部環境が整ってきたこともあり、今回着手してみると、当時のイギリス性科学事情を明らかにするうえで、ハヴロック・エリスよりもはるかに重要な人物であることがわかった。イギリス人で当代随一の性科学者と任じられていたハヴロック・エリスよりも、『性的倒錯』の協力当時ではシモンズの方こそ性科学の知見においてはるかに先を行っていたこと、この書物の研究手法などもシモンズの先導によることなどが明らかになった。シモンズの名が埋もれていたのは、ひとえに親族によるシモンズの名前の抹消ゆえであることも明らかになった。性的な事柄の赤裸々な告白、という意味においてもシモンズの『自伝』は非常に大きなインパクトを持つ。クラフトエビングらによる大陸の性科学との連携にもかかわっていたことなども本研究課題によって明らかになった。 この研究を大陸の先導者、リヒャルト・フォン・クラフトエビングから始まる性科学の歴史に位置付ける論考を紀要に発表した。 今後はシモンズを中心に研究を推進してゆくつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の対象時期における性科学の実態において、ハヴロック・エリスが先駆者であった、という従来の見解を覆し、エリスよりもはるかにシモンズが意識において開明的であったのみならず知見においても大陸との人脈においても枢要な役割を担っていたことを明らかにした点は、一定の成果と言ってよいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、本研究課題の関心にとってジョン・アディントン・シモンズが占める重要性を再確認することになったことから、今後はシモンズに焦点を絞り込む形で研究を推進してゆくことにした。 そのため、次年度以降はシモンズの足跡をたどり、スイスのダヴォスなどにも足を運んでみたい。また、ロンドンにあるシモンズ関係の資料、あるいはテキサス大学が所蔵する手稿資料などの調査も行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
校務等が多忙のため、当初予定していた渡航計画を十分に実現できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降は、ジョン・アディントン・シモンズに集中して、アメリカ合衆国テキサス大学にてシモンズ、エリスの手稿資料を調査したり、ロンドンに滞在してシモンズの資料を精力的に収集して研究の推進に努めたい。
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Research Products
(2 results)