2018 Fiscal Year Research-status Report
ワイルド裁判後のイギリス性科学の展開と文学 ーエリス、シモンズ、カーペンター-
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15K02322
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Research Institution | Wako University |
Principal Investigator |
宮崎 かすみ 和光大学, 表現学部, 教授 (10255200)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ダーウィニズム / 婚姻史研究 / ヴェステルマルク / 夏目漱石 |
Outline of Annual Research Achievements |
19年度は、次年度に控えた1年間のサバティカルに向けた準備期間であった。また入試委員としての学内業務が多忙を極めたため、研究にあてられる時間は少なくならざるをえず、表に出てくる業績はあまり出すことのできない一年であった。 とはいえ、ワイルドの書簡集の編集・翻訳作業は進行しており、20年度内の刊行を目指して鋭意作業中である。この仕事は、編集作業がかなりの部分を占めるため、いわゆる翻訳書という範疇には収まらず、それなりの時間を要している。 研究業績として特筆すべきは、当時勃興しつつあった民族学・文化人類学における婚姻・異性愛の発達史という新たな領域にアプローチしたことである。ダーウィニズム以後の当時のイギリス社会人類学会をけん引していたヴェステルマルクやハワードらの婚姻史研究を整理し、大陸の研究史との相違を浮かび上がらせた。つまり、大陸ではバッハオーフェンの母権制議論がそれなりの展開を見せていたのに対して、イギリスでは母権的な原始乱婚状態を否定する研究が支配的であったことを、ヴェステルマルクやハワードの研究を通して辿った。さらに、そこからホモソーシャリティ概念の展開を、夏目漱石のテキストを通して跡付ける論考を紀要に発表した。この研究では人類の婚姻の歴史から異性愛の展開をたどったが、これまでの研究は同性愛の側からの視点に偏っていたことに気づかされ、異性愛の視点からのアプローチの重要性を気づかされた。また、ダーウィニズム以降のイギリスにおける婚姻史の整理がほとんどなされていなかったことも、発見となり、この分野の研究の重要性と継続の必要を痛感した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
19年度は、先述のように学内の入試業務に忙殺されたほか身内にも不幸があり研究に集中できない時期が続いた。ただし、これまでの研究に新たな視点を導入し、文化人類学の婚姻の発達史の研究を整理し、当該課題に異性愛の視点からアプローチをした。これはまだ萌芽的なものであるが、当該課題を遂行する上で奥行きができたと考えている。 また20年度に一年間のサバティカルが予定されていることから、19年度は主にその準備に当てたため、海外渡航なども控えたが、20年度には研究が大きく進展するつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる20年度は幸いにして、1年間のサバティカルがとれたので長期間イギリスやアメリカに滞在して徹底的な資料収集にあたり、研究を最終的にまとめあげることになる。また長年準備してきたワイルドの書簡集の編集・翻訳作業を終えて刊行の運びにもってゆく予定である。
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Causes of Carryover |
19年度に1年間の研究休暇をもらえることが18年度中に決定した。18年度は学内業務(入試委員)が多忙を極め、かつ身内の不幸もあったことなどから、18年度中の海外での資料収集を諦めて次年度以降に集中させることにした。19年度は長期の海外滞在で多額の経費を使うことが予想されたからである。これにより19年度には長期にわたる海外での資料収集が可能となる。 19年度は、イギリス、アメリカ(テキサス大学、ハーヴァード大学)等で長期滞在して研究を遂行させまとめる予定である。
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Research Products
(2 results)