2015 Fiscal Year Research-status Report
近代初期イングランドにおける祝祭と文学の関係をめぐる文化史的研究
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15K02326
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
竹村 はるみ 立命館大学, 文学部, 教授 (70299121)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 法学院 / 祝祭 / エリザベス朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1596年から1597年にかけて、ロンドンのミドルテンプル法学院にて行われた祝祭『愛の王』を取り上げ、1590年代における宮廷祝祭の受容と変容という観点から分析した。宮廷社会と密接な人的繋がりを持つ法学院では、祝祭文化においても宮廷祝祭の影響を色濃く受けており、『愛の王』が当時宮廷では定番の趣向となっていた騎士道ロマンス的モティーフを用いていることからも窺える。しかし、その一方で、1590年代特有の政治的騒擾を反映する形で、こうした騎士道的ユーフォリアに対する懐疑的立場も認めることができる。宮廷祝祭が大衆文化に浸透し、ショー化することとなった1590年代において、後の17世紀に顕在化することとなる宮廷祝祭と市民祝祭の乖離とも呼べる現象が既に生じていたことが、調査の結果明らかになった。本研究の報告は、英語論文"Gesta Grayorum and Le Prince d’Amour: The Inns of Court Revels in the 1590s"として纏め、現在査読中である。 また、ミドルテンプル法学院は、シェイクスピアの喜劇『十二夜』が上演されたことで知られるが、騎士道的ロマンティシズムの風刺化は、『十二夜』にも共有されている。ミドルテンプル法学院の祝祭文化において中心的な役割を担った法学院生は、同時代の商業演劇界にも人脈を有していたと推測され、法学院祝祭と商業演劇の双方向的な影響関係に関する調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、日本英文学会第87回大会のシンポジウム「言葉の絵を見る―エクフラシス再考」に講師として登壇したため、当該研究とは異なるテーマに関する研究を行う必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
ミドルテンプル法学院の祝祭文化において中心的な役割を果たした法学院生達は、ジョン・ダンやベン・ジョンソンら同時代の英詩人と知的交流を有していたことは知られているが、その交流がどのような文学的・文化的影響力を発揮したかという点については研究が進んでおらず、不明な点が多い。当該研究では、法学院の知的ネットワークを踏まえつつ、当時の知識人・文人に大きな衝撃を与えたエセックス伯の蜂起とそれに続くエセックス伯の処刑に焦点を当て、エセックス伯が牽引したエリザベス朝末期、具体的には1590年代の宮廷祝祭文化と、ステュアート朝の宮廷仮面劇を比較し、近代初期イングランドにおける祝祭文化の変容を精査する。
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Causes of Carryover |
3月中旬から下旬にかけて海外出張を行ったが、学内経理システムの関係で、一部の支払いは新年度の処理となるため、結果的に2015年度としては残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度3月中旬から下旬にかけて実施した海外出張の旅費に充当する。
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Research Products
(1 results)