2019 Fiscal Year Research-status Report
中世イギリス神秘主義文学における対話と読者に対する説得的ストラテジーに関する研究
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15K02330
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
吉川 史子 広島修道大学, 商学部, 教授 (50351979)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神秘主義 / 中世英文学 / 宗教散文 / ジャンル / 話題転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、まず、談話標識として機能する nou (現代英語の now) の使用と作品ジャンルとの関係を Helsinki Corpus of English Texts で調査し、その研究成果をオーストラリア国立大学で行われた ICHL24 で7月1日に発表した。Helsinki Corpus の中英語期のファイルに含まれるテクストごとに nou/now の綴りで検索し、検索結果をテクストジャンル別に分類、出現頻度が高いテクストで、テクスト中のどのような位置に出現するかを考察した。その結果、テクストの大部分が対話から成るロマンス、聖史的劇においては、地の文ではなく、対話文で頻出し、信仰の手引書や説教のテクストでは、著者の対象読者に対する対話において、話題の転換点で用いられていることがわかった。 また、口語的な文体に頻出するという傾向、対話の相手に対する命令文や指示を表す文、対話の相手に対する呼びかけの言葉と共起するという傾向が、全てのテクストに共通して見られた。反意接続詞や than (現代英語の then) と共起頻度も高かった。 ICHL24 の後は、これまで中心的に調査してきたテクストの写本間の異動や、写本作成の背景を確認する作業を始めた。12月にはノリッジのジュリアンの写本のひとつである Anglais 40 の調査のため、パリの国立図書館に出向いた。ところが、ストライキの最中で、思ったほど調査が進まず、3月にもう一度調査に行く計画を立てた。だが、今度は新型コロナウイルスが流行し、調査に行くこともできなくなり、研究期間の延長を申請することとなった。 それ以外の研究活動としては、2月に、Oxford と Cambridge でマルグリット・ポレート著 Mirouer des Simples Ames Anienties の中英語訳の写本等を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究に関係する重要な作品の写本間の異動や、その写本が作成された背景を確かめるため、12月にノリッジのジュリアンの Long Text の最重要の写本 Anglais 40 の調査のため、パリの国立図書館に出向いて調査を行った。ところが、大規模なストのため図書館の開館時間が短かったこともあり、思ったほど調査を進めることができなかった。そのため、3月にもう一度調査に行く計画を立てた。だが、今度は、新型コロナウイルス流行のため、調査にでかけることもできなくなり、研究期間の延長を申請することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの流行が早期に収まれば、昨年計画していた Anglais 40 の調査をきちんと終えて本研究プロジェクトを終了したいが、流行が収まらない可能性もあるので、その場合は、写本を確かめることは今後の課題とし、校訂されたテクストを用いてこれまで調査した結果のみをまとめて本研究プロジェクトの成果としたい。
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Causes of Carryover |
ノリッジのジュリアンの A Revelation of Love の Long Text の最重要写本であるフランス国立図書館蔵 Anglais 40 の2回目の調査研究を3月に予定していたが、新型コロナウイルスの流行により、調査に行くことを断念せざるを得なくなり、調査を完了できず、本研究費による研究プロジェクトの遂行期間を1年間延長することにしたため。
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Remarks |
最新の研究業績は上記 web ページにはまだ反映されていない。
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