2016 Fiscal Year Research-status Report
局地戦争から読み解くアフリカ文学:ボスマンとングギを中心に
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15K02332
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 緑 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (10219024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 研一 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80170744)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アングロ=ボーア戦争 / チャールズ・ボスマン / マウマウ戦争 / ングギ・ワ・ジオンゴ |
Outline of Annual Research Achievements |
19世紀末から20世紀初頭にかけて南部アフリカで展開されたアングロ=ボーア戦争、ならびに20世紀中葉の東部アフリカ・ケニアで勃発したマウマウ戦争に関するアフリカ人作家の作品は、大英図書館がその主たる所蔵先となるが、同図書館の厳しい著作権ルールにより、作品の複写には大幅な制限が加えられている。従って、今回の夏季休暇を利用した大英図書館における文献調査では、作品(アングロ=ボーア戦争:主としてCharles Bosman作品群;マウマウ戦争;Ngugi wa Thiong'o初期作品群)の解読と関連資料の収集に終始せざるを得なかった。これを踏まえて、9月以降は作品分析に着手した。現時点では、ボズマンは、辺境に暮らすボーアの心性を風土にからめて手際よく浮き彫りにし、ングギは伝統文化と西欧文明の狭間で呻吟するケニア人の描写により植民地支配の不当性を告発することが特徴といえる。 また、ボーア戦争に関しては、海外からの義勇兵とボーア人との関係をめぐる新たな知見を得ることができた。すなわち、外国からの志願は、徒手空拳のボーアに対する義憤や共感・同情であるとする通説を覆し、冒険心の発露、アフリカと言う「場」に対する興味、あるいは自国の体制への不満、ナイーブな理想主義といった理由からであるとする。そのため、彼らは当初こそ好意的に受け入れられたものの、実際にはボーア人からさほど「歓迎」される存在ではなかった、という説である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大英図書館の厳格な著作権ルールにより、作品の複写に制約が加えられているため、作品の解読及び分析に予想外の時間がとられた。従って、戦争の受容や影響に関する論考に際しては、ボーア戦争の文化的側面も重要な要素であるが、戦争称揚を目的とするボーア戦争関連商品の調査にまでは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、戦争下における生活・精神世界、ならびに戦争・抵抗の記憶と歴史との関係性を明示し、ボスマンとングギの文学世界を世界文学という枠組みのなかに還元し、そこに占める位置と意義とを論じたうえで、アフリカ文学の持つ秘められた潜在的な可能性についても考察を加える予定にしている。しかしながら、その前提となる諸作品の解読と分析に従事することが先決であるのは言うまでもない。 さらに、現存する作家であるングギとエイブラハムズへのインタヴューの可能性を模索する。なお、ングギは在英、エイブラハムズはジャマイカ在住である。
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Causes of Carryover |
国際共同研究者である米国ポモナ大学クリタ教授が、一身上の都合により、急遽来日を取りやめたため、予定していた上智大学における一連のセッションを中止せざるを得なくなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本年度に予定していたポモナ大学クリタ教授とのセッションに充当する予定である。
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Research Products
(5 results)